
設備トラブルが多くて、点検の視点に抜けがないか不安だな。
最近工場が安定していて、トラブルを身をもって学ぶ、という時代では無くなってきたなあ。
というような悩みがある方も多いかと思います。
やはり知識は安全への感性を身に付けるための源泉です。化学プラントの事例収集ができる本とサイトをまとめました。
本記事が、過去の重大事故や災害の原因をしっかり学ぶ手段を確立できる手助けとなるような情報となれば幸いです。
事故事例を収集する目的
事故事例を収集する目的は以下のとおりです。
- 痛い思いをするまえに、過去の教訓から学んだ知見を活かして対処することができる(未然防止)
- 痛い思いをしたあとの、対策の方向性が正しいかを社外における原因の深堀り状況を参考にできる(再発防止)
- 若い世代の感性アップや知識の充実化を図ることができる(技術伝承)
おもにこの3つの目的を達成するための手段(調査方法)について解説していきます。
事故事例解析のコツは?
何が起こったか要約する
一般的な表現に置き換え、まずは発生事象を正しく理解する
原因に関係する事項を要約する
主として人間と管理が係る原因事項に着目する。
間接原因やその背
原因の要約から管理全般の教訓を読みとる
自らの仕事に共通のする普遍的なこと事柄を見出すことです。
とくに「人間と管理」に関する事柄に着目して考えるとよいです。
m-SHELモデルで示されているように、人間とその周りに存在する環境(人、設備、手順など)との接点でエラーが起き、事故につながっていることが大多数だからです。
事故事例収集方法①:インターネットで調べる
1.高圧ガス保安協会ホームページ「事故情報」
2004年移行の事故・トラブル事例のうち一部に関して、写真やイラスト付きで事故事例を詳細に記述した資料が公開されています。
フロー図や不具合部の詳細図などで事例が詳しく理解でき、事故の原因を詳細に記載しているため、教訓として学ぶことができます。

高圧ガス事故事例報告書 添付資料の例
外部リンク高圧ガス保安協会ホームページ「事故情報」
2.経済産業省ホームページ「高圧ガスの安全」
高圧ガスの事故統計や最近の高圧ガス事故情報が公開されています。
外部リンク経済産業省ホームページ「高圧ガスの安全」
3.失敗知識データベース「石油/石油化学/化学」
さまざまな産業の事故やトラブルが公開されていて、その中で化学・石油プラントなどの事故事例は「石油/石油化学/化学」の分類に記載されています。
2008年頃までで更新は止まっているようですが、事故の詳細・背景・原因・教訓などが詳しく書いているため、自分たちに置き換えて学習しやすいように整理されています。

失敗事例データベース一例:詳しい背景・原因・教訓の記載あり
外部リンク失敗知識データベース
4.厚生労働省 職場の安全サイト「化学物質による災害事例」
物質名をキーワードに過去の事故事例を検索できるのが特徴的です。
イラストを使った状況・原因・対策などの情報が丁寧に記載されているため、ある物質を新規に取り扱う・または変更する際に活用できます。

化学物質による災害事例
5.Safety and Chemical Engineering Education(SAChE)「Process Safety Beacon」
こちらはアメリカの化学工学会(AIChE:American Institute of Chemical Engineers)の安全関係の組織である化学プロセス安全センター(CCPS:Center for Chemical Process Safety)が

Process Safety Beacon(和訳版あり)
事故事例収集方法②:書籍で調べる
化学物質・プラント事故事例ハンドブック
日本で起きた化学物質・プラント関連の爆発・火災・破裂・漏洩等の事故事例を消化するとともに、それから得られた知識と教訓を体系化しまとめたものです。
1件ずつ1,2ページに簡潔にまとまっており、事故の発生状況や原因がよくわかるものとなっています。
破壊事故(失敗知識の活用)
破壊事故の事例のうちから代表的な事例を選出して、失敗知識の活用を図る目的で書かれたものです。
エロージョン、コロージョン、応力腐食、脆性破壊などのメカニズムや事故事例を体系的に学べます。
事例に学ぶ 化学プロセス安全 Beaconの教訓と事故防止の知恵
インターネットで調べる、でも触れましたが、Process Safety Beacon(2006年4月~2014年1月号)の和訳をまとめた一冊です。
トラブル事例と教訓がよくまとまっており、ぜひプラントに関わるエンジニアは一読したい事例集です。
まとめ
今回の記事はいかがでしたでしょうか。
ぜひとも様々な事故事例をまとめて収集し、自部署に置き換えあてはめていくことで、不安全な状態や行動を正していきましょう。