化学プラントにおける安全の防護層と、そのうちの重要な一つであるアラームマネジメントについてまとめました。

・安全に関して、多重に防護層を組むことでシステムを強固にしていると聞いた。具体的にどんな防護層が必要なんだろうか?
・工場におけるアラーム管理の考え方がわからない。体系的なものはないか?
その疑問に答えます。
その考え方や思想を職場で統一していかない限り、いつまでもアラームのシステムは旧来のまま。
職場のメンバーと防護層やアラームマネジメントの内容を共有することで、膨大な作業かもしれませんが、一歩ずつ理想の姿に近づけるはずです。
・安全の多重防護層とはどんな構造であるべきか
・アラーム管理はどんな思想に基づいて定めていくべきか
この記事を読めば、上記のことがわかります。最後までお付き合いください。
リスク低減のための独立多重防護層とは?
独立多重防護層とは、アメリカの化学工学会であるAIChEの化学プロセス安全センター(CCPS)が提唱したものです。
本質的に爆発や火災などの重大事象に至らないような設計にすることがもっとも望ましいことですが、実際には簡単なことではありません。
システムの故障や反応物質の変質、などさまざまな非定常状態に至る可能性があるためです。
システムに関わって働くわたしたちが心がけるべきことは以下のとおり。
システムと付き合う心構え
- 通常状態からの「ずれ」に気づき、早期に対処すること
- 万が一重大事象に至っても、被害を拡大させない設備として、機能を維持すること
- 被害を拡大させないための訓練をして、体制を整えること
防護層の8段階本質安全設計は以下の8つです。
- 本質安全設計
- 基本プロセス制御システム
- クリティカルアラームや人の介入
- 自動安全計装システム
- 圧力開放弁など事故に至らせないための物理的防御
- 防液堤など被害を拡大させないための物理的防御
- プラント内緊急対応計画
- 地域防災計画
2,3,4はアラームシステムに関係するものです。
定常運転を継続するためには特に2,3は安全性と生産性を高く維持するためのものです。
一方、4が機能するときは経済的損失も受けています。
オペレータの役割と求められるアラームとは?
工場におけるオペレーターは通常運転を監視し、異常な状態を早期に検知して対処していく役割を担っています。
各状況に応じて、オペレーターへ知らせるしくみが大切です。
さらに詳しく
- Normal(正常時)
通常の制御システムが目標値に追従させていることが基本です。
この状況で目標に追従しているかどうかの監視と微調整を促すアラームが大切です。 - Upset(変調・異常時)
制御システムだけでは変動をカバーしきれません。
正常状態に戻すための操作をするために、復帰操作を促すアラームが必要です。 - Shut-down(緊急停止時)
ESD(緊急停止システム)が正常に作動しているかどうかの監視と万一、ESD が正常に作動していない場合の対応操作
ESDが正常に作動しない場合に安全停止のためのオペレータ操作を促すアラーム
8つの適切なアラーム特性とは?
アラーム特性とは、EEMUA(Engineering, Equipment and materials User’s Association)が定めたものです。
この機関で適切な8つのアラーム特性についてまとめています。
Relevant(操作相関性)
各アラームはオペレータによる対応操作を要求するように設計されていること。
アラーム発生後,その対応操作が実施できるよつにすることです。
Unique(一意性)
各アラームは1つの異常状態を通知するように設計されていること。
1つのの異常状態を通知するために複数のアラームが発生してはいけません。
Timely(適時性)
各アラームはオペレータによる対応操作のための許容時間を持って早過ぎず、遅すぎず、適切なタイミングで発生するように設計されていること。
アラーム発生後、その対応操作がある一定の時間内に実施される必要があります。
Prioritized(優先度適正)
各アラームはその状態の重大性と対応の優先度をアラーム発生時に提供するように設計すること。
アラーム発生時に、その優先度が正しく提供されていることが大切です。
Understandable(理解可能性)
各アラームはその状況の優先度、現在の状況と予測される将来の状況、そして取るべき対応操作を示すアラームメッセージをオペレータが理解しやすい明確で簡単な情報として提供するように設計されていること。
アラーム発生時に、その状況の優先度、現在の状況と予測される将来の状況、そして取るべき対応操作を示すアラームメッセージがわかりやすいことが大切です。
Diagnostic(診断性)
各アラームはその現在の状況を理解、発生源を特定し、また将来を予測するための情報をメッセージとしてアラーム発生時に提供するように設計されていること。
アラーム発生時にその現在の状況を理解し、発生源を特定し、また将来を予測するための情報がメッセージを発するレベルが理想的です。
Advisory(操作支援性)
各アラームはオペレータによる対応操作ガイドをアラーム発生時にメッセージとして提供すること。
アラーム発生時にオペレータによる対応操作ガイドがメッセージとして提供されています。
Focusing(注目性)
各アラームはオペレータをその異常状態に素早く、かつ確実に注目させ,対応操作へと導くように,視聴覚など五感に訴えること。
アラーム発生時にオペレータは素早くそのアラームに気付けることが大切です。
アラームマネジメントは奥深い
今回は、「安全の多重防護層とアラームマネジメントを解説。アラーム管理は安定操業の要」について書きました。
化学プロセスにおいては多くのハザードがあり、多数の防護層を敷いています。
中でもアラーム管理を重点的に行うことで、防護層を破ることなく安定した運転を継続できるのです。
- 適切なアラームとは何か?
- アラームが鳴った原因は何か?
安定運転の継続のために必要なことです。日ごろから注力していきましょう。
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ちょっと高いので借りられるとよいですが、安全システムに関しては以下の本がとにかく詳しいです。