近年のヒューマンエラーによる事故事例の中で、共通点が認められます。
いくつかの事例から得られるものをまとめていますので、ぜひ学びの一助となればと考えます。
①レガシー(古い)システム
2005年4月:福知山線脱線事故
直接原因は速度超過であり、安全装置が旧型であることも間接原因のひとつでした。
2007年:年金記録の大量の不備
年金記録が消え、社会問題化した事例。数十年前のデータ入力や管理面の不備が、年金受給時期が近づくとともに表面化したものです。
②正しく伝わらない意図や情報
2005年10月:JR東日本京浜東北線の踏切で通行人がはねられ死亡
ダイヤの乱れで踏切が開かずの状態になっていました。
踏切には「こしょう」と表示していたが、通行人には意味が分からず無理に横断してしまった事例です。
2008年2月:新千歳空港で飛行機が無許可で離陸
管制官が「すぐにテイクオフできるよう準備せよ」と指示したが、機長は「すぐにテイクオフできる」と誤解しました。
「テイクオフ」という言葉は離陸と許可と取り消しにしか使わず、大気指示には使わないという慣例のため、誤解したのです。
2009年3月:伊丹空港で連続して滑走路トラブル
管制官が点検作業が終わっていない滑走路へ侵入するように促して、飛行機が許可なく滑走路へ侵入してしまいました。
類似の事例が続いたことで、空港側は誘導路や滑走路の路面表示などの改良を実施しました。
③強力だが脆いシステム
2005年12月:みずほ証券がジェイコム株を大量に誤発注
「1株を61万円で売れ」を「61万株を1円で売れ」という入力ミスをしてしまったことで巨額の被害を被っています。
誤発注の訂正に時間がかかったことに対して、東京証券取引所の責任も問われました。
2007年:JR高崎線で、列車が停止禁止位置で停車し、架線がショート
電力系統中枢部での事故だったため、首都圏全体で大幅運休となりました。
これは運転手が信号に気を取られ、停止禁止位置を忘れたためです。
④チェック体制の穴
2006年:東京慈恵会医大青戸病院で手術患者の体内に60㎝のワイヤーの抜き忘れが発覚
1年以上放置していました。
2007年:気象庁が桜の開花予想を間違える
原因はパソコンへのデータ入力ミスでした。2010年には桜の開花予想を取りやめています。
業務の廃止や簡素化はヒューマンエラーを無くす重要な手法です。
2010年:東京都の監察医務院で、解剖する必要のない遺体を解剖
75歳男性の遺体を84歳男性の遺体と取り違えてしまいました。
目印が手首の白いバンドだけだったので、目立たず情報が少なすぎたことが原因です。
誤認識したものの、正当化しようと書類を改ざんしたことも明らかになり、問題になりました。
⑤安全のための装置と規則
2008年:ベトナムで交通事故死者数が激減
これはバイク運転者へのヘルメット着用義務化によるものです。
人間に「注意しろ」と説明・指導するよりも、安全具を義務化するほうが、事故を減らせるのです。
2008年:ロサンゼルスで列車衝突事故
運転手は走行中に携帯メールをしていました。
日本では当たり前にの安全装置は、法律で義務づけれていなかったのも原因の一つです。
⓺安全の担い手
2009年:三洋電機が洗濯乾燥機に5回目のリコール
2004年からのリコール修理の際に電線の圧着忘れなどのミスがあり、それが原因で火災事故が起き、まさにいたちごっことなってしまいました。
2009年:航空自衛隊小松基地でF15戦闘機が脚を出し忘れて着陸
飛行機が自動で警報を出すも、パイロットは脚を出したものと思い込み無視し、胴体で着陸してしまいました。
見張る役目の地上の管制官や監視員もパイロットに知らせませんでした。
まとめ
今回の記事はいかがでしたでしょうか。
「m-SHELモデル」の記事でも示したように、管理面、ソフトウェア(手順等)、ハードウェア、人との情報伝達などの要因によって事故・トラブルが引き起こされているのです。
ぜひとも社外事例や日々のニュースをネタに、どんな背後要因があるのかを見出す習慣を身に付けていきましょう。
ヒューマンエラー対策の記事もよく読まれています。どうぞ参考にしてください。
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