
・事故や不祥事などの失敗はなぜ起きてしまうのだろうか。
・個人だけでなく、組織としての失敗やミスを防ぐためにはどんなことに気をつけたらいいのだろう?
大小に関わらず、自分のチームをまとめる方々には上記の疑問点があると思います。
この記事では、生産現場で数々の事故・トラブルを経験してきたわたしが、失敗について学んだ結果を共有します。
なぜ失敗が続いてしまうのか?
事故やトラブルなど失敗が続いてしまうのは「失敗が正しく学ばれ、生かされていない」からです。
うまくいく方法だけを学ぶ、という昔のやり方では想定していない問題が発生する危険性があるということです。
失敗は成功のもと、と言われるように失敗から多くのことを学んでいくことが上達への近道です。
失敗を次に生かす取り組みをあきらめてしまえば、失敗は失敗のもとになってしまうでしょう。
失敗の定義
失敗とは「人間が関わったひとつの行為が、望ましくない、あるいは期待しないものになること」と定義されています。
失敗には階層性があります。
いくつかの要因が重なって望ましくない形で表面化するものです。
ピラミッドの底辺から上にいくほど、失敗原因は個人の責任から社会的な責任へと規模や影響が拡大していきます。
失敗に立ち向かわなければならない理由
人は必ず失敗します。
経験不足、不注意、誤判断などによってミスが発生した時には、失敗が大きな影響をおよぼす前につぶすことが重要です。
その根拠として、労働災害の世界で有名な「ハインリッヒの法則」を記します。
一件の重大災害の裏には、29件のかすり傷があり、さらにその裏には300件のヒヤリ体験が存在するのです。
大失敗は、いくつもの失敗原因が連鎖的に重なって起きるものなの<で、この連鎖を断ち切ることが大切です。
したがって現場で働くわたしたちは、ヒヤリ体験という小さな失敗に正面から向き合わなくてはなりません。
失敗が起こる10の原因
各項目ごとに解説していきます。
小さな失敗を分類しながら、対処方法を考えていきましょう。
失敗原因1 未知
世の中の誰もが知らない現象が原因となる失敗です。
未知による失敗は今では限りなく少なくなっていますが、失敗をプラスにとらえ「失敗は成功の母」として発展してきた結果です。
失敗原因2 無知
失敗の予防策や解決方法が、すでに世の中に存在するにもかかわらず、その情報をもたずに起こった失敗です。
防ぐためには他社情報の収集など、勉強することが大切になります。
失敗原因3 不注意
体調不良、過労、多忙、あせりなど注意が散漫になっている時に起こりがちな失敗です。
リスクの高い作業においては、朝一の集中できる時間帯に計画したり、体調がすぐれない場合には中止するなどの措置が必要です。
失敗原因4手順の不遵守
組織のルールや習慣を守らなかったために起こる失敗です。
「安全活動は全員でおこなう」という原則にもとづき、若年者やベテランすべての層に徹底する意識づけが必要です。
失敗原因5 誤判断
状況を誤認識したり、正しく認識したものの判断を間違えたことによる失敗です。
判断基準や判断材料が欠けていることはありがちです。
失敗原因6 調査・検討の不足
判断する人が、十分な検討をしなかったことで起きる失敗です。
実際には、すべての情報が完璧に揃うことはほぼないでしょう。
不測の事態が起きたときのことも想定し、その対応策も事前に考えておくことで、あわてないことが大切です。
失敗原因7 制約条件の変化
制約条件が時間の経過とともに変化し、想定を超えた変動が起きることによる失敗です。
一例として、為替レートや金利の大変動で、投資額が大きく跳ね上がってしまう場合に備えて、リスクヘッジが必要です。
失敗原因8 企画不良
企画や計画自体に問題があることによる失敗です。
これは振り出しに戻って、仕切り直すことが対策です。
しかし組織のリーダーの発案であった場合、実行担当者に失敗の原因や責任を押し付けてしまうことがありえます。
失敗原因9 価値観不良
自分と自組織の価値観が、まわりと食い違っていることで起きる失敗です。
過去の成功体験に頼ったり、組織内のルールばかりを重視すると、常識的な理解・適応が難しくなります。
経済、法律、文化、原理原則など、あらゆる面からフラットな視点で評価しましょう。
失敗原因10 組織運営不良
組織自体がものごとを進めるようになっていないために起きる失敗です。
リーダーの判断ミスで、組織運営を修正していかないと、問題を大きくしてしまいます。
よく起こる4つの失敗例
よくある失敗の4事例を紹介します。
別の部署で同じ失敗を繰り返す
分業制により効率化された組織では、部署ごとに役割が明確であり、指揮命令系統がはっきりしておりコントロールしやすいというメ
一方で、部署間の情報が伝わりにくいデメリットもあり、同じ失敗を繰り返す可能性が高まります。失敗情報を共有するしくみの整備が必要ですね。
隠れたリンクに気づかない
ツリー構造の縦割り組織において、見えないリンクが思いもよらない失敗を誘発する可能性があります。
例えば、生産現場において装置を新設する場合に、配管や機器を設計する機械エンジニアとそのプロセスをつくるプロセスエンジニア
強度上や能力上、問題がない設計であっても、微量の不純物の混入・濃縮などを考慮できずに機器が腐食して破口するようなことは起
それぞれの立場だけで仕事を進めることは避けましょう。
途中変更による失敗
役割分担を明確に行なっているがゆえに、何をどう変えたかを共有することが大切が、難しいものです。
途中変更の際に情報断絶が起こり、改善したつもりが失敗につながる場合がよくあります。
最終計画を常に最終にしておくことが肝心です。
手配・連絡漏れによる失敗
前任者と後任者の間での引き継ぎがきちんとされず、手配・連絡漏れとなって起こるものです。
大きなプロジェクトでは、こうして完全にストップしているのに、まわりが誰一人として気づかなかったという現実も起こっています
各部署間の情報断絶が起こらないようなシステムづくり、あるいは人づくりに取り組むべきでしょう。
まとめ
今回の記事では「失敗を正しく学び生かすには?事故や不祥事をふせぐための対処方法」について述べてきました。
失敗が起きたときには、正しくそれに向き合い、二度と同じ失敗を起こさないように行動していくことが重要なポイントです。
事故やトラブルを繰り返さないために、原因をとらえ、連鎖を断ち切っていきましょう。
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