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FMEA(故障モード影響解析)とは?工場の安全性改善手法の使い方とコツ

FMEA

今回は故障モードの解析手法として幅広く活用されている、FMEAを紹介していきます。

お悩み社員

  • 様々なリスクアセスメント手法があるけれど、FMEAの特徴はどんなものなんだろう?
  • FMEAって具体的にどうやったらいいのだろうか?

そんな疑問に答えます。

FTA(故障の木解析)の類似手法であり、やり方は逆のやり方になります。

製品品質や工程に影響を与える因子を網羅的に抽出し、そのシナリオに対して最終事象(事故、トラブル、変調)を推定するやり方です。

一見とっつきにくいやりかたではありますが、習得すれば解析対象を網羅的にリスク評価できる有益な手法です。

想像してもいなかった要因で製品品質への影響が発生し、しばらくその調査に時間をとられ、その他の業務も後手に回ってしまった。

そんな経験はありませんか?そうならないようにするために、早期に製品品質や工程の信頼性を上げるために確実に取り組んでいきましょう。

工程の新設時や変更時のタイミングで行うことが最も効果的です。

ぜひ記事の最後までお付き合いください。

FTA(故障の木解析)についてはこちらからご覧いただけます。

関連記事安全配慮義務違反とは?罰則や過失相殺を含む3つの判例付きで解説

FMEAとは?定義と目的

定義

FMEAとは、a Failure Mode, Effects Analysis(故障モード、影響度解析)のことです。

FMECA、a Failure Mode, Effects and Criticality Analysis(故障モード、影響度および重要度解析)とも呼ばれます。

米国軍用規格として1949年に発行され、1970年頃から日本でも主に化学工場の安全性や信頼性改善のために利用され、いまでは医療や自動車など幅広い業種で品質や安全管理の手法として用いられています。

製品またはプロセスが故障する状態を、故障モードと呼びます。

FMEAの手順とは、プロセスまたは製品の故障、影響およびリスクを識別して、解消・低減する方法です。

目的

問題が発生する前にプロセスおよび製品の問題を予防することがFMEA(故障モード影響解析)の目的です。

製品やプロセスの改善が開発プロセスの初期段階で明確になり、比較的容易に低コストで変更が可能となり、コスト削減と安全性の強化を図ることができます。

近年では事故・労災の未然防止の位置付けとして危険源の特定およびそのリスクアセスメントが求められており、故障モードごとにリスク評価し対策していくことの要求が高まっています。

FMEAによる効果の例

やはり安全性や製品の品質向上など、工場における工程や作業の見直しが図られることで様々なメリットを手取ることができます。

FMEAによる効果

  • エンジンの組立作業で故障件数が1/3にまで減少した
  • エンジンの分解修理で毎月6,000ドルを削減した
  • 自動車部品工場で、設備稼働時間が74%から89%へ増加した
  • 顧客苦情が平均年間2件からゼロになった。

では実際にその手順を確認していきましょう。

FMEAの手順

FMEAの解析手順は以下の8つのステップを踏むのが一般的です。

一つずつ解説していきますね。

FMEAの体制

チームとしての規模は通常4人から6人であるが、各専門分野(製造、技術、材料、保全)などからチームは代表で構成します。

プロセスや製品に関する習熟度が異なるメンバーで構成されているほうが良いです。

プロセスをよく理解している人から役立つ意見が得られるはずですが、よく知らない人は客観的な考えを持ち込むことができるでしょう。

step
1
プロセスのレビュー

FMEAチームの全員が、まずは対象をよく知ることです。

製品であれば製品図面を、プロセスが対象であればプロセスフローチャートを入手し、手元に置きましょう。

またチームが抱える疑問に答えるためには、該当する製品またはプロセスの専門家が同席することにしましょう。

step
2
潜在的故障モードについてのブレインストリーミング

製品やプロセスについて十分理解すれば、製品品質やプロセスに影響を与える潜在的故障モードについて考察を始めることができますね。

たとえば要素別(ヒト、方法、設備、材料、および環境)に焦点を当てて一連の網羅性のあるブレストをおこなうことで、潜在的な故障モードについてのリストを作ることができるでしょう。

4M(ヒト、設備、材料、方法)分析についてはこちらからご覧いただけます。

関連記事4M5E分析とは?事故の原因調査や危険予知にも使える要因整理方法を解説!

ブレストで出てきた故障モードリストについては、分類分けを行いましょう。

各部品または製品の構成品目、およびそれらの付属設備などの項目に仕分けするとよいでしょう。

step
3
各故障モードの潜在的影響を書き上げる

故障モードのリストができたら、ここからはその故障モードがもたらす影響度を書き上げましょう。

「もし~ならばプロセスや製品品質が~~となる」

「もし故障が発生したら、その結果どうなるのか?」

といった形でWhat-If形式でまとめていくことが有益です。

What-If分析についてはこちらからご覧いただけます。

関連記事What-If解析とは?簡易的かつ効率的にリスク評価する方法を解説

step
4
各故障モードの影響度、発生頻度、検出可能性を評価する

影響度、発生頻度、検出可能性は10点法で行います。1が最も低く、10は最も高い評価です。

評価基準の定義をより詳細に決めておくほど、チームが評価をするときに合意を得やすくなります。

影響度の評価基準例は以下の通りです。

特定の故障が発生した場合、その影響がどれほど重大かについて、以下の基準例を用いて推定しましょう。

影響度の評価基準(例):横スクロール可
評価説明定義
10危険なほどに高い故障は、顧客または従業員が負傷する可能性がある
9極めて高い故障は、規則への不適合となる
8非常に高い故障は、装置の運転を不可能にする
7高い故障は、高確率で顧客の不満足を招く原因となる
6中程度故障は、製品のサブシステムに、または製品のある部分に異常をもたらす
5低い故障は、顧客の苦情を引き起こすのに十分な性能低下を引き起こす
4非常に低い故障は、顧客の工程や製品を改善して解決されるが、多少の性能低下がある
3わずか故障は、顧客に多少迷惑をかけるが、顧客は性能低下をきたすことなく、解決できる
2極めてわずか顧客には故障は容易にわからないが、顧客の工程または製品には軽微な影響を及ぼす
1なし顧客は、故障に気付くことなく、顧客の製品に影響を与えることはない

発生頻度の評価基準は以下の通りです。

機器の故障確率データや、プロセスの工程能力、運転実績などから評価してみましょう。

発生頻度の評価基準(例):横スクロール可
評価説明定義
10非常に高い:故障は避けられない1日に1回以上発生する。または10回に3回以上発生する
93日に1回以上発生する。または10愛に3回以上発生する
8高い:故障は繰り返される毎週1回以上発生する。または100回に5回以上発生する
7毎月1回以上発生する。または100回に1回以上発生する
6中程度:故障は時々発生する3か月に1回以上発生する。または1000回に3回以上発生する
56か月に1回以上発生する。または10000回に1回以上発生する
41年間に1回以上発生する。または10万回に6回以上発生する。
3低い:故障は比較的無視しうる3年に1回以上発生する。または1000万回に6回以上発生する。
25年に1回以上発生する。または10億回に2回以上発生する。
1極めてまれ5年以上で1回発生する。または10億回に2回未満発生する。

最後に検出可能性評価基準は以下の通りです。

故障の影響を早期に検知する手段を把握し、評価しましょう。

検出可能性の評価基準(例):横スクロール可
評価説明定義
10絶対に不確実製品は、検査されていない。または故障を引き起こす欠陥が検出不可能な状態
9ほとんどありえない製品は、合格品質基準に基づいて、サンプリングされ、検査され、次公邸へ引き渡される
8ありえない製品は、抜取サンプルに欠陥がなかったことをもとにして合格となる
7非常に低い製品は工程内で全数が手作業で検査されている
6低い製品は、ポカヨケ装置を使って全数が手作業で検査されている
5中程度統計的工程管理手法が用いられ、製品はオフラインで検査されている
4わずかに高い工程管理手法が用いられ、直ちに処置がとられている
3高い工程能力が1.33よりも大きな工程について効果的な対処が実施されている
2非常に高い全製品が、全数自動検査されている
1ほとんど確実欠陥は明らかになっている。または検査機器の定期的な校正、および予防保全が行われ、全数自動検査がなされている

step
5
各影響のリスク優先度を算定する

ここまで算出してきた評価から得られた点数を用いて算出しましょう。

  • リスク優先度=影響度×発生頻度×検出可能性

対策前後の効果を測定するための基準としても役立ちます。

step
6
リスクの高い故障モードへ処置・対策を講じる

チームは評価した結果を、リスク優先度が高いものから順にランク付けをしていき、対策の優先順位を決定しましょう。

優先度が高いものに関して、具体的な処置を行っていきましょう。

処置の具体例を以下に示します。

影響度を下げる

  • 保護具の選定
  • 安全停止装置/緊急時遮断装置
  • 破損しても深刻なけがに結びつくことのないように安全ガラス等異なる材料を採用する

発生頻度を下げる

  • 実験計画法、および設備の改造によって発生頻度を下げる
  • 問題解決活動に重点を置く
  • 製品またはプロセスを自動で作動するメカニズムをとりこむ

検出可能性を上げる

  • 工程管理手法を監視し、工程が逸脱しそうな場合を識別する
  • 測定装置の正確さを確実にし、定期的に校正する
  • 予防保全を実施して、問題が発生する前に検出する

 

FMEAワークシートの活用例

以下に示すようなワークシートができあがります。ぜひ参考にしてみてください。

構成要素潜在的故障モード原因潜在的影響影響度発生頻度重要度現状の対策追加対策
油圧モータポンプのオイル漏れシール部の劣化着火燃焼5210外観点検予備機設置
スプラインの摩耗グリース不足起動時の異音・振動326停止時メーカー点検点検データ確認
ブッシュの摩耗グリース不足同上326停止時メーカー点検点検データ確認
ブッシュ固定ボルトの緩み振動モータ損傷5210停止時メーカー点検定期振動測定
配管のオイル漏れ振動による緩み擦れオイルの流出5210外観点検定期部品交換
オイルの補充忘れ液面計汚れによる見落としポンプ停止122液面計清掃

 

FMEAの注意事項と他の手法との相違点

HAZOPの場合は、設計意図からのずれを洗い出すためのHAZOPガイドワードが考案されていますが、FMEAではそのような手段は特別準備されていません。

機械、電気、化学、などの専門家によるチーム編成やトラブル事例の活用によって抜け・漏れが無いように努める必要があります。

事故トラブル事例の教訓を参考に、ガイドワードを追加して網羅性を上げていきましょう。

化学プラントなら「腐食」「摩耗」「発熱」などキーワードが数多くあります。

 

FMEAの用途とは?

化学プロセスの安全から始まったFMEAですが、様々な分野でのリスク評価方法として活用することができます。

安全性

安全上の問題が発生する前に問題を予測・解消するプロセスを改善する為に用いられます。

製造の設備だけでなく、製品の安全性を確実にするためにも用いることが可能です。

経理/財務

財務戦略の決定や信用度または投資リスクの評価に有効に使うことができます。

疑わしい信用履歴のある見込み客に対してFMEAを行うことで、顧客信用を損なう事柄や信用の破綻が与える影響などを評価し、財務リスクの減少に結びつけることができます。

ソフトウェア設計

航空輸送、医療、銀行などでソフトウェアのバグがあると重大な災害になりかねません。

ソフトウェアの設計品質FMEAでは、問題が発生する前に識別することで解消できます。

情報システム/テクノロジー

ソフトウェア/ハードウェア/システムなどの問題が原因でコンピューターの誤作動は起こり得ます。

FMEAによって情報システムの設計と据え付けを強化できるようになります。

マーケティング

不快感を与えるまたは誤解を招くおそれのある宣伝を識別するために活用できます。

潜在的なリコールやトラブルに対して、事前に計画し、対処することができますね。

人的資源

計画と実際の組織の再構築とを関係づけるために活用できます。

FMEAは工程管理の網羅性を上げることができる解析手段

今回は「FMEA(故障モード影響解析)とは?工場の安全性改善手法の使い方とコツ」と題してまとめてきました。

ぜひともリスク評価手法を身に付けて、安全な職場づくりを目指していきましょう。

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  • この記事を書いた人

けびん

30代前半、製造現場の最前線で管理者を務めています。文献や実践から得られた学びをこのブログを通じてみなさんと共有していきたいと思います。

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