FTA(Fault Tree Anaysis:故障の木解析)について解説していきます。

- 重大危険事象の要因を探り、システムの信頼性を可視化したい
- FTAの基礎的な使い方、効果的な使い方は何だろうか?
そんな疑問に答えます。
わたし自身も設備の故障・不具合の原因を可視化して、周囲のメンバーや上司に説明するときに活用しています。
この便利なツールであるFTAでできることは以下の通りです。
- 重大事象(危険、故障)を発生させる要因を明確化できる
- 要求事項を満足する信頼性を確保できているかを検討できる
- どの潜在的な故障要因が、システムの故障発生確率を上げているか確認できる
- システムの信頼性を改善する様々な設計代替案を解析できる
設備故障確率の定量化だけでなく、人のエラーなど定性的な要因解析図としても活用することができ、応用が利くものです。
最後までお付き合いいただき、ぜひとも活用してみてください。
FTA(フォルトツリー解析)とは?
FTA(フォルトツリー解析)とは、望ましくない発生事象の要因を探る解析手法であり、さまざままな産業で活用されています。
FTAは、最悪の事象が発生する条件を明らかにし、さらにその発生確率を評価することも可能です。
FTAでは頂上事象から出発し、頂上事象の発生に寄与する原因事象を後ろ向きにたどり、頂上事象を発生させる事象の組み合わせを明らかにすることとなります。
この手法は、1962年に米空軍のミサイル発射管制システムの「予防すべき重大な要因」を洗い出すための評価手法として開発されたものです。
また1967年のアポロ計画でのアポロ1号の火災事故をきっかけに、FTAを活用した設計に関するプログラムが開始されたと言われています。
つまり不具合原因解析のためのツールではなく、本来はシステムや製品の開発・設計段階において不具合や故障の未然防止を図るためのツールなのです。
FTA分析の特徴は以下の2つです。
・その故障の分析に対する取り組むが「トップダウン」方式になっている
・故障にいたる要因系の相互関係を論理数学的にモデル化している
FTAの実施手順
ここからはFTAを実施するにあたっての手順を示していきます。
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1頂上事象の定義
システムにおいて、発生してはならない・望ましくない重大な事故・故障・失敗事象を定義します。
頂上事象には、失敗にいたる故障の形態(反応器火災・爆発等)、システムの運転状態(製品品質規格外れ等)などが含まれます。
システムを設計・開発していくにあたっては、事象を抜けなく慎重に討議しなければなりません。
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2事故を引き起こす要因(1次要因)の決定
頂上事象に直結する1次要因を定めます。
一次要因は互いに独立した事象として取り上げられますが、システムの機能・役割から決定されます。
解析するシステムの範囲や、主系統と補助系統の境界などを明確にしておきましょう。
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3フォルトツリーの作成
頂上事象の発生条件を、機器故障、ヒューマンエラーを考慮しながら論理的に展開し、フォルトツリーを作成します。
原因に関して、それ以上細かくできないと考えられる基本事象まで展開します。
頂上事象に対して、影響の大きい要因群を摘出しましょう。
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4フォルトツリーの評価
実績データや信頼性データベースを参考に、基本事象の発生確率を評価し、FTA計算ソフト等を用いて頂上事象の発生確率を計算します。
フォルトツリーの作成
フォルトツリーの例を以下に示します。
フォルトツリーは、頂上事象を頂点にしてそれを引き起こす条件となる事象を論理的にツリー状にした図です。
フォルトツリーでよく用いられる記号は以下の図の通りです。
フォルトツリーが完成したら、次に基本事象の集合体であるカットセットを求めます。
フォルトツリーを参考に、頂上事象が起きるための条件を論理式に表し、展開します。
冗長なカットセットを取り除き、頂上事象を引き起こすのに十分な基本事象の集合であるミニマルカットセットを求めます。
上図の左側チャートにおいて、たとえばX1とX3が最も故障しやすい機器だとしたら、「X1×X3」がミニマルカットセットとなります。
基本事象が互いに独立であれば、基本事象の積や和として発生確率が計算できます。
フォルトツリー実施時の注意点
実際にフォルトツリーを作成する際の注意点をいくつか共有します。
ミニマルカットセットを探すことに注力すること
ミニマルカットセット(minimal cut set)とは、「頂上事象を引き起こすために必要な最小限の事象から構成する集合」のことです。
システムの中で、要因から最終事象までの流れにおいて最も故障しやすいものはどれかを確認することが大切です。
最も故障しやすい設備に対して改善の手を打てば、効率的に故障発生確率を下げることができるからですね。
共通原因事象をおさえておくこと
共通原因事象(Common cause events)とは、システムまたはFT図の中で同一の発生原因をもつ異なる事象のことです。
発生原因が共通となっている場合、その原因となる機器が一つ故障しただけで種々の事象を引き起こしてしまいます。
この原因となる機器はフォルトツリー上は別の位置にあっても、同じものとしてみなして計算しましょう。
ここを間違うと確率がガラッと変わってしまいます。
まとめ
今回は、「FTA(フォルトツリー解析)とは?重大事故のシナリオ調査を行う方法を解説」について紹介してきました。
FTAはIEC 61025として国際規格にもなっている世界標準の解析手法です。
ぜひ様々な手法の違いも意識しながら、効率的にシステム解析を行っていきましょう。
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