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HAZOPとは?定量的なリスク評価手法・手順を解説!【22のガイドワード付】

HAZOPとは?

お悩み社員

・HAZOPって聞いたことはあるけど、いつ何に使っていいかよくわかりません。

・定量的なリスク評価といっても、網羅的に正しく評価できるか心配です。

そんな考えをお持ちの方も多いと思います。

この記事では、そんな疑問に対する解説をしていきます。

この記事の内容

・HAZOPの歴史、概要と基本的な解析手順が確認できる

・HAZOPを化学プラントで実際に行う時の具体的キーワードを確認できる

この記事を書いているわたしは、化学プラントにおけるHAZOPによるリスク評価の経験者です。

専門性に関しては大学の先生のほうが詳しいかもしれませんが、現場で手法を活用する側の立場として、理解を深めてきました。

HAZOPを実施し現場のリスクを浮き彫りにすることで、よりよい生産現場をつくりあげていきましょう。

HAZOPとは?その思想と歴史

HAZOPとは、ハザード操作性解析(Hazard and Operability Study)のことを指し、化学プラントを対象とするリスク評価を目的に開発された手法です。

HAZOPは、潜在危険性の特定に抜け・漏れがないように7つのHAZOPのガイドワード(案内語)とプロセス運転条件を組み合わせ、通常状態との「ずれ」に着目します。

FMEAとも似ており、構成要素と失敗モードに着目している点が異なります。

解析の考え方としては全ての産業に適用可能。

住化コベストロウレタン(株)のHAZOP取扱い事例

住化コベストロウレタンという住友化学とコベストロ(独大手化学メーカーバイエルから素材化学部門を分社化)との合弁会社はHAZOPを積極的に活用しています。

既存プロセス・新規プロセス問わず、すべてをHAZOPで評価し、データベース管理しています。

HAZOP活用方法(出典:2017日化協 住化コベストロウレタン株式会社)

HAZOP活用方法(出典:2017日化協 住化コベストロウレタン株式会社)

HAZOP手法開発の歴史

また英国ICI(Imperial Chemical Industries)社が自社の安全性評価を行うために、1960年代前半に開発しています。

ICI社によるHAZOP手法は1974年に発表され、その後1977年には実施マニュアルが発行され標準化。

現在のところHAZOPの多くは、このマニュアルに基づいて実施するのが主流なようです。

HAZOPは、プロセスの設計内容を安全性および運転操作性の観点からチェックして、潜在危険がないかどうかを確認するためによく用いられています。

 

解析手法

解析の手順は、大きく以下の4つの手順を踏みます。

  1. チームのリーダー選任
  2. 検討資料の準備
  3. HAZOPチームの編成
  4. 検討作業

チームのリーダー選任

HAZOP手法に詳しく、経験豊富なメンバーをチームのリーダーに選出します。

そのためには、HAZOPの経験者を育成しなければなりません。

もし現時点で経験者が不足している場合には、外部の専門家をリーダーとして招くのも良い方法です。

検討資料の準備

化学プラントにおけるHAZOP解析に必要な検討資料を揃えましょう。

化学プラントに習熟していない方は読み飛ばしてもらって構いません。

始める前に、プロセスの専門家から各メンバー間へ簡単な運転のポイントを説明したほうがのちのち効率的に進められると思います。

必要な準備物

  • プロセスフロー図
  • 物質収支、熱収支
  • 機器仕様
  • 運転手順
  • 運転限界値
  • インターロック設定条件
  • SDSなどの安全情報

HAZOPチームの編成

HAZOPは、リーダーのもとに、オペレーター、プロセスエンジニア、機械設計エンジニア、電・計エンジニア、保全関係者、などの異なる技術者から編成します。

属性の異なるメンバーを集めることで、さまざまな視点から抜けなく確認することが可能です。

もっともよくないのは、現場のオーナー(生産部門)だけで編成することですよ。

内輪で固まった解析をすると、どうしても先入観をもってスタートしてしまうため「きっとこの事象がリスクだろう」という決めつけで、時短に走りがちです。

フラットな目で見ることができる若手、あるいは別の部門の専門家などをメンバーに入れましょう。

検討作業

1つの機器や、1本の配管を1単位として、分割します。

流量、圧力、温度、液面、組成などとNo, Less, More, Reverseなどのガイドワードを組み合わせてそのずれを想定しましょう。

 

ずれの原因となる機器故障や操作ミスが抽出されれば、プラントへの影響を検討します。

故障などのエラーを放置したときに最終的にはどうなるか、潜在的な危険性を想定することが重要です。

自工場の工程由来の火災、爆発、漏洩、健康、環境影響だけでなく、外部火災、停電、地震、などの外部要因や事象も想定が必要。

安全対策に関しては、異常の検知手段があるか、異常発生時に事故や危険事象に進展させない影響緩和策や防護策があるか?という観点でおこないましょう。

ガイドワード一覧

ガイドワード集を以下の一覧表にまとめてみました。

パラメータ案内語ずれずれの原因、チェックポイント
流量No流れ無しポンプ停止、配管閉塞、弁閉止
Less流量減配管の部分閉塞、フィルターの部分閉塞
More流量増弁誤操作開、弁故障開、差圧大
Reverse逆流逆止弁不良、上流機器の圧力低
Other than送り先が違う手動弁開閉間違い、系外への流出
圧力Less圧力低い圧縮機停止、ポンプ故障、配管の閉塞
More圧力高い下流配管閉塞、ポンプ回転数上昇、圧力制御弁閉止
温度Less温度低い熱媒の停止、吸熱反応、加熱炉停止、熱交換器閉塞
More温度高い暴走反応、熱交換器の閉塞、冷媒停止
液面Less液面低い液面制御弁故障開、液抜きライン漏れ
More液面高い液面制御弁故障閉、ポンプ液量停止
組成Less組成比減少原料供給量変更
More組成比増加原料供給量変更
As Well As不純物の混入熱交換器のチューブ漏れ、縁切り弁シート漏れ、鉄さび混入
分離Less分離減流速過大、混合過剰、エマルジョン形成
More分離増静置時間過剰、流量不足
反応No反応なし原料間違い、触媒被毒混入
Less反応不足触媒劣化、温度不足
More過剰反応異常攪拌、温度高、触媒活性高い
Part of部分反応副反応性生成増
Reverse逆反応反応条件不適切
As Well As付加反応不適切な触媒

解析の際の注意点

おおきく以下の2つの注意点に触れておきます。

網羅性を挙げること

ずれの内容とその原因に抜けが出ないように、What-Ifなど別の解析手法で用いられる視点も活用して網羅性を高めることが重要です。

ガイドワードに関しては、業種・業態ごとに異なりますので、事前にある程度定めておきましょう。

さまざまな専門家を集めること

保全、設計、オペレーターなどさまざまな専門家を集めて、フラットな意見を取り入れましょう。

生産部門だけが解析する場合、思い込みでリスクの大きさやシナリオの種類を決めつけてしまう可能性がでてきます。

安全防護策の根拠を明確にすること

運転条件や設備の劣化などさまざまな要因に左右されながら刻々と状況が変わる生産現場において、「あのときはうまくいったから大丈夫」などと過去実績の話をし続けるのはタブーです。

網羅的に各事象を見ていく中で、「どうしてこの運転条件に設定したのだろう?過去に暫定で決めただけでは?」など疑問が多数湧いてくるはずです。

すぐに全部の問題を解決することは不可能ですので、まずはわかっていないことを整理し明らかにすることからはじめましょう。

リスクのシナリオや根拠をすべて記録に残すこと

生産プロセスとして一旦評価すれば、運転条件や設備の変更をしない限りは、評価結果を教育資料とすることができます。

人材が流動的になりつつあるこの時代こそ、検討は文字化して形式知化していきましょう。

まとめ

今回は「HAZOPとは?定量的なリスク評価手法・手順を解説!【22のガイドワード付】」という内容でまとめました。

この手法を使いこなして、ぜひ生産現場を良くしていくための調査・整理を行っていきましょう。

実際に改善につなげていくことがもっとも重要になりますので、評価しただけで満足しないように!

と過去のわたしの失敗も添えて終わりにしたいと思います。

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  • この記事を書いた人

しば

30代前半、製造現場の最前線で管理者を務めています。 文献や実践から得られた学びをこのブログを通じてみなさんと共有していきたいと思います。

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