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ヒューマンエラーの分類と発生原因とは?人のエラーを誘う3つの特性を解説【ヒューマンファクター】

ヒューマンエラーの分類と発生原因とは?人のエラーを誘う3つの特性を解説【ヒューマンファクター】
お悩み社員

なぜ注意していたはずなのにヒューマンエラーを起こしてしまったのだろう?

ヒューマンエラーをうっかり、ぼんやり、急いでいた、等の理由だけで簡単に片付けていいのだろうか?

そんな悩みをお持ちの方も多いかと思います。

今回はそんな悩みや疑問をお持ちの方へこたえる形でヒューマンエラーの発生原因を解説していきます。

この記事の内容

・ヒューマンエラーの発生原因の3大要素「生理的身体的特性」「認知特性」「集団の心理的特性」がわかる

・失敗した人自身がどのような時にヒューマンエラーを起こしやすいか自身の特徴を理解できる

m-SHELモデルの考え方であるように、失敗した人自身を責めるのではなく、「失敗した人を取り巻く環境をどう改善するか考える」ことが再発防止には重要です。

しかし失敗した本人がどういうときにエラーを起こしやすいのか、特性を理解することも大事なことです。

周りの環境が変化した時に、自身の3つの特性をコントロールできればエラーを防ぐことも可能となるからです。

そもそも人間はエラーをする生き物です。

人間の精神や根性に訴えかけても、意識や注意力の持続性は永遠ではないため、科学的、経験的に正しい対策でエラー防止を図る必要があります。

まずはその発生を誘発する要因となる人間の特性について理解していきましょう。

ヒューマンエラーの定義と分類

ヒューマンエラーの一般的な定義は以下の通りです。

「一連の行為における、ある許容限界を超える行為、つまり、システムによって規定された許容範囲を逸脱する行為」

「人間の本来持っている特性が、ヒトの取り巻く広義の環境と一致していないため、結果として誘発されたものである」

人的ミスであるヒューマンエラーの分類を図に示したものが以下です。

ヒューマンエラーの分類

ヒューマンエラーの分類

図の通り、「認知」「判断」「行動」の一連の流れの中のどこかでエラーが発生してしまうのです。

特に認知のミスの分類と一般的な対策まとめは以下の通り。

認知ミスの分類(無知・無理解)
内容対策
正確に伝わっていない復唱、確認会話
正確に伝えない現地現物での確認
あいまいなことが聞けない聞きやすい雰囲気づくり
伝え方に問題がある指導者の教育
腹に落ちていない図で伝える、体験する
伝える情報が少ない暗黙知の顕在化
認知ミスの分類(誤認識)
内容対策
短期記憶を忘れるメモ、中断カード
残族記憶により間違える再度確認
差が小さすぎて気がつかない配置の変更
情報が多すぎて、見落とす余分な情報をカット、協調
感覚の間違い、見落としやすい補助線、強調
意味のないものは間違える具体的な名前をつける
目立たない強調する表示
計器が見間違いやすいアナログからデジタルへ
発生確率が低く見落とす自働化
経験による思い込み手順書など紙による伝達

ひとつひとつは一見簡単そうに見えますが、どうしても徹底するのはむずかしいですよね。

なぜヒューマンエラーが起こってしまうのか?

その理由を探るべく、人間に備わっている特性を解説していきます。

ヒューマンエラー発生に関わる人間の特性

人間の特性と人間を取り巻く環境との相互作用によって行動が決まりますが、ここからは人間の特性について理解していきましょう。

人間が持っている3つの特性として以下の3つがあります。

  1.  生理的身体的特性
  2. 認知的特性
  3. 集団の心理的特性

20万年ほど前からこれらの特性は変わっていません。

それにも関わらず産業革命以降、機械やITの発達によって人間を取り巻く環境は変わってきており、それに対応する必要性が生じています。

1.生理的身体的特性

人間の変えることのできない基本的特性である生理的特性は、事故と大きな関係があるのです。

1(1)疲労

人間は一定時間以上働くと機能低下が起こります。

作業効率の低下、集中力の低下、意欲減退、知覚機能の低下などさまざまな影響があります。

筋肉を使い続けたことで乳酸がたまり、筋肉が傷んでいると脳が判断する。デスクワークで脳を使い続けることで疲労する、という考え方ができます。

1(2)睡眠

眠気を感じているときは、疲労を感じる時以上に機能が低下します。本来の能力であれば対処可能なのに対処不能に陥ることがしばしばです。

24時間起き続けている人の判断力は、ビール瓶2本飲んだ人(ほろ酔い状態)と同じ状態だということがわかっています。

長時間労働などの要因には十分に配慮が必要です。

1(3)加齢

転倒災害被災者の性別・年齢別比較(出典:厚生労働省HP 平成 30 年労働災害発生状況の分析等)

転倒災害被災者の性別・年齢別比較(出典:厚生労働省HP 平成 30 年労働災害発生状況の分析等)

転倒災害被災者の性別・年齢別分布をみると、年齢層が高い人の割合が高いことがわかります。

年齢とともに筋力やバランス能力、視力や聴力機能の低下、知覚速度や記憶力の低下が起こります。

それぞれ墜落事故に結びつく、危険信号の見落とし、とっさの判断を誤る、などの要因となりえます。

低下そのものよりも、加齢による機能低下を自覚しないまま若いころのイメージで行動してしまった時もエラーに繋がり易いです。

2.認知的特性

人間の認知的特性はヒューマンエラーとは非常に関係が深いです。

認知とは、「ものを認識する、記憶する、判断する、意思決定する、動作する」という脳の中で起こる情報処理プロセスのことです。

ヒューマンエラーに関わる情報処理モデル

ヒューマンエラーに関わる情報処理モデル(種々の文献より筆者作成)

情報処理モデルの中で起こりうる認知の特性は以下の9つです。

【認識】ちゃんと前を向いていても不注意となる:注意の特性

いつもと違うものも併せて見ていると、その情報を選択的に認知してしまい、それ以外の情報は目に映っていても処理されません。

たくさんのものを同時に注意しようとしても処理能力オーバーとなったり、持続的に注意しようとしても20~30分しか続かないという特性もあります。

【認識】近くにあるものはまとまってみえる:ゲシュタルト特性

人間は多くの対象が同時に存在すると、ひとつの「まとまり」として知覚してしまう特性があります。

知覚にあるもの、似たもの、つながっているもの、などで見間違いが発生することがあります。(ゲシュタルト特性)

【認識】見たいものを見て聞きたいものを聞く:視覚・聴覚による認知の特性

人間は「見たもの」をそのまま理解しているわけではなく、脳のイメージでものを見ています。

よってあいまいな情報があると、前後の刺激や周りの情報から勝手に自分なりに解釈してしまいます。

その思い込みによって間違った結果を引き起こすことがあります。

音声に関しても自分が期待しているように聞いてしまうのです。「B」と「D」を聞きまちがえたり、「E」と「G」、「入り」と「切り」の似た発音があると特に聞き間違いやすいです。

【判断】大したことはないよ:正常性バイアス

現実にせまった予期せぬ危険について理解できずに、鈍感になってしまい性状の範囲内のものとして本能的に判断してしまうことがあります。

地下鉄列車に煙が入ってきても、理解できずに辛抱強く静かに耐えるケースがあります。

【判断】不安解消:認知的不協和・こじつけ解釈

患者を取り違えてしまったときに、手術前に本来の患者と会ったときと比べて髪が短いことに気付いていましたが、前日に散髪したのだとこじつけて解釈し、勝手に疑問を解消・納得してしまった事例があります。

一度納得してしまうと安心してしまい、それ以上の原因追求をしなくなる傾向があります。

【判断】時間とともに記憶は薄れ、変わっていく:忘却曲線と記憶の変容

エビングハウスの実験により、無意味なつづりを完全に覚えさせても、時間の経過に伴って忘却が進むことがわかっています。

注意事項を忘れて捜査を続けてしまうなど、人間の記憶はとても脆弱なものです。

また目撃してから証言する間に、別の情報が入ったり、誤った情報が入ったり、誘導するような質問があると最初の記憶が影響を受けてゆがんでしまうこともあります。

【判断】忘れたくても忘れられない:積極的忘却は困難

忘れやすい記憶とは反対に、古い記憶が思い出され、新しいことをしようとするときに古い記憶にもとづいて行動し間違ってしまうことがあります。

記憶は消滅するわけではなく、何かきっかけがあるとよみがえる傾向があります。

3.集団の心理的特性

集団心理に関しては、様々な社会実験がなされており、集団の中で陥りやすい心理状態が明らかにされています。

代表的なものを紹介していきますね。

権威勾配:上司に逆らえない

自分ひとりの判断では1%未満しか実行できない、ためらうような行動であっても、上司の命令があれば65%もの人が「服従」してしまうという実験結果があります。

(アイヒマンの電気ショック実験)

同調行動:みんなが言うことに従う

自分以外の人間がたった3人異なる意見を述べると、同調行動をとる圧力がかかり、自分の意見を主張することが非常に難しくなる傾向にあります。

あなたも似たような経験はありませんか?

社会的手抜き:みんながいるから手を抜く

自分ひとりだったら100の力を発揮するところを、他者がいると手を抜いてしまう、チームで作業するとヒトは単独の時よりも働かなくなる、このような現象を「社会的手抜き」といいます。

リンゲルマンの実験では、1人の綱を引く力を100%とすると、2人のときは93%、3人のときは85%、8人のときは49%の力しか出していないことがわかっています。

(リンゲルマン効果)

社会的促進:得意なことは張り切ってやる

競争状態、あるいは他者が見ている状況で作業したり行動したりするほうが、処理効率が上がることがあります。

共同者や傍観者が個人のパフォーマンスを向上させることを「社会的促進」といいます。

得意なことの場合は促進され、不得意なことでは抑制される傾向にある点が注意です。

集団浅慮:優秀な人や均質な人が集まると間違う

優秀な人たちが集まると、自分たちこそが唯一正しい判断力を持っていると過信し、批判的な情報を軽視し、誤った仮定や決定を変更できないままつきすすんでしまうことがあります。

集団の中では、批判的な評価者の役割、反対意見や疑問点を挙げる役割、などを置いて多角的に議論することが必要となります。

リスキーシフト:集団のほうが大きなリスクを取る

人は集団となると1人のときとは異なった判断や行動をしてしまうことがあります。

集団の決定よりもより危険な選択をすることをリスキーシフト現象と呼びます。

このような集団の心理特性を理解したうえで結論を吟味する必要があります。

まとめ

今回は「ヒューマンエラー発生の原因とメカニズム。エラーを誘発する人間の3つの特性を解説【ヒューマンファクター】」について書いてきました。

人間にはさまざまな認知的特性があり、さまざまな周囲の環境が絡むとうまくかみあわずにエラーに繋がる可能性が高まります。

このような人間の認知的特性に沿った対策を行っていくことが重要です。

  • この記事を書いた人

しば

30代前半、製造現場の最前線で管理者を務めています。 文献や実践から得られた学びをこのブログを通じてみなさんと共有していきたいと思います。

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