品質・環境

ISO9001とは?品質マネジメントシステムのしくみでPDCAを回す方法

ISO9001とは?品質マネジメントシステムのポイント

2015年からISO(アイエスオー)の規格が見直しされました。

ここ数年は日本国内で品質にあっても企業の品質に関する不正が相次ぎ、品質要求がさらに高まっていますね。

いまやISO9001品質マネジメントシステムを認証して持っているだけでなく、正しくそのシステムを活用することが必須の時代になっています。

お悩み社員

  • とりあえず要求事項に関する書類をまとめておけばいいか
  • 難しいけど例年同様だな

このように何も考えずにシステムをこなしていくと、いつか問題が大きくなってしまう可能性があります。

ここでISO9001である品質マネジメントシステムをうまく回すにはどうしたらいのでしょうか?

  • PDCAサイクルを意識する

そうです。とてもシンプルで王道のやり方なのです。

そこでISOが要求する事項のポイントをまとめました。

この記事を読んでほしい人

  • ISOに関する業務を全く知らない人
  • 新たにISO品質マネジメントシステムの管理担当になった人
  • 時々ISO担当のサポートをしているが、全体像が見えていない人

工場の現場ライン職を務める中で、ISOを実践で勉強してきたわたしが、ISO初心者へお伝えしていきたいと思います。

監査する側が常に教えてくれるのは、

  • 業務プロセスは可視化・標準化されているか?
  • 自分たちの弱みを振り返り、改善する機会としているか?

全体を網羅的に眺めて基本ができていることを確認しつつ、自分たちの課題や弱みの改善に目を向けていきましょう。

ぜひ一連の流れで最後まで目を通してみて、あなたが足りないと思う部分を活用してみて下さい。

筆者

今回の記事はISO9001で要求される事項を網羅的にまとめてきましたので、記事をコピーしていただき、辞書のように活用するのもおすすめです!

ISO9001とは?基本と原則

品質マネジメントシステムで達成すべき目的は、顧客の要求事項と適用される法令・規則要求事項を満たす製品やサービスを提供し、その結果として顧客満足を向上することです。

以下のとおり、品質マネジメントシステムには7つの原則があります。

品質マネジメントの7つの原則

  1. 顧客重視:顧客要求を満たし、顧客満足を向上させるように努める
  2. リーダーシップ:目的や目標を一致させ、組織の人々を積極的に参加させる
  3. 人々の積極的参加:能力ある人が権限を与えられ、積極的に活動する
  4. プロセスアプローチ:システムをプロセスのつながりとしてマネジメントする
  5. 改善:内外の状況変化に適切に対応するためにシステムを改善する
  6. 客観的事実に基づく意思決定:意思決定の不確かさを少なくするために、データ・情報の分析評価から意思決定する
  7. 関係性管理:品質保証や顧客満足の向上を継続的に成功させるため、利害関係者との関係をマネジメントする

認定時や定期的な監査においては、上記7点をしっかり意識した質問がなされるはずですよ。

ISO9001監査の質問例

「組織目標は上司から部下へきちんと伝達されていますか?」:リーダーシップ

「昨年発生した品質不良の件について、再発した場合の処置手順、再発防止の検討状況を教えてください」:改善

「製品品質測定記録について、測定機器の誤差拡大時の判定・処置について確認させてください」:客観的事実に基づく意思決定

「新たに入社されたメンバーの教育状況と力量を認定した結果・記録を確認させてください」:人々の積極的参加

7原則を意識して要求事項を読み解いていけば、組織における変化(不具合、改造、人の入れ替え)などにも柔軟に対応していけるはず。

要点としてとらえていきましょう。

ISO9001はPDCAサイクルを目指すもの

品質マネジメントシステムでは、Plan→Do→Check→Actionの一覧の活動を繰り返すことを目指します。

筆者

すぐに解決しなければ、と気負うことなく、継続的な改善をしているか?という観点が大切!

要求事項

では各要求事項の要点を1つずつ確認していきましょう。

提出書類の整理にとらわれるのではなく、要求していることの要点をとらえていきましょう。

ここからはポイントの羅列になりますので、記事URLをコピーして必要なときに辞書的に活用することがおすすめです。

4.組織の状況

品質マネジメントを効果的に行うためには、組織が自らの状況を正しく理解することです。

4.1 組織及びその状況の理解

  • 外部・内部の課題を明確にし、適切に取り込むことが重要
  • リスクへの予防的な活動計画と実施が品質マネジメントである
  • 外部・内部の課題は常に変化する。変化に応じて活動を見直す

4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解

  • 組織の品質マネジメントの利害関係者は誰なのかを明確にする
  • 利害関係者からどのような要求事項があるかを明確にする
  • 利害関係者からの要求事項の変化は報告・レビューする

4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定

  • 境界および適用範囲を定め、文書化する
  • 課題と要求事項、組織の製品及びサービスを考慮
  • 適用不可の場合、その正当性を示せば適用しないと決定できる

4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス

  • 品質マネジメントシステムは確立後、運用しながら維持改善する

5.リーダーシップ

トップマネジメントには、品質マネジメントに関するリーダーシップ及びコミットメントの実証が具体的に要求されています。

5.1 リーダーシップ及びコミットメント

  • トップマネジメントに要求される役割を具体的に理解する
  • 自ら行う、またはトップ自らを含めて権限委譲された組織に確実に実行させる
  • リーダーシップとコミットメントの実証(記録)を要求される

5.1.2 顧客重視

  • 顧客要求事項と法令・規制要求事項を明確にして満たす
  • 顧客満足向上のためリスクや機械を決定して取り組む
  • 品質マネジメントシステムの顧客満足向上の重視を維持する

5.2 品質方針

  • 品質方針は品質マネジメントシステムを導く役割を担う
  • 品質方針は文書化し組織に適切に伝達し、理解され、適用する
  • 利害関係者が品質方針を入手できるようにしておく

5.3 組織の役割、責任及び権限

  • 品質マネジメントの機能と階層を表したのが組織図
  • 機能や要求事項との関係を表すのが役割分担表とマトリクス表
  • 特定の役割と責任の割当では管理責任者を任命しなくてもよい

6.計画

「計画」では、品質マネジメントシステムが意図した結果を達成するための適切な仕組み、取り組み方法、有効性の評価方法を決定します。

6.1 リスク及び機会への取り組み

  • リスクは起こる可能性のある影響、機会は取り組むのに適した状況
  • 影響の大きいリスクや効果の大きい機会を優先して取り組む
  • 製品などの適合への潜在的影響に見合ったものを選び取り組む

6.2 品質目標及びそれを達成させるための計画策定

  • 機能・階層・プロセスで適切な品質目標を立てることが重要
  • 目標は測定可能なものとし、監視・伝達・必要に応じ更新する
  • 品質目標達成の計画では実施事項や責任者、時期などを決める

6.3 変更の計画

  • 変更は計画的に行い、結果を考慮し完全に整っている状態にする

7.支援

品質マネジメントに必要な資源や文書管理などの要素に関する要求事項です。

7.1 資源

  • 支援とは、システムに必要な資源の提供、情報伝達、文書化のこと
  • 資源の提供は内部資源や外部提供者からの取得を考慮する
  • 内部資源か外部提供者かは柔軟に対応することが大切

7.1.2 人々

  • 資源の中でもっとも重要なのは人材である
  • リスクに基づく考え方で、運用・管理に必要な人々を提供
  • 人々には、力量・認識を備えることが求められる

7.1.3 インフラストラクチャ

  • 運用に必要なインフラストラクチャを明確にして提供、維持する
  • 製品・サービスの適合を達成するために必要なものを選定
  • 設備機器管理台帳などで管理し、状態を維持する

7.1.4 プロセスの運用に関する環境

  • プロセスの運用、製品・サービス適合に必要な環境を提供・維持する
  • 適切な環境は社会的、心理的、物理的要因の3つを含む
  • 2Sや5Sなど、組織にあわせて作業環境の維持をする

7.1.5 監視及び測定のための資源

  • 監視・測定の資源とは、要求事項への適合を検証する機器や人
  • 監視・測定の目的に適切な資源を提供し、適切さを維持する
  • 測定のトレーサビリティが要求事項なら、機器の正確性を担保する

7.1.6 組織の知識

  • 組織の知識とは、組織の目標達成のために使用伝達共有する情報
  • 組織の知識は維持し、必要な範囲で利用できる状態にする
  • リスクに取り組む場合、追加の知識・更新情報を得る方法を決める

7.2 力量

  • 各機能に必要な人々の力量を明確にする
  • 必要な力量を備えるために教育訓練、指導、配置転換を実施する
  • 力量の証拠として、適切な文書化した記録を保持する

7.3 認識

  • 品質方針と品質目標の認識は、組織の目的達成の基本となる
  • 自ら貢献する利益と、適合しないことの不利益を認識させる
  • 認識を持たせるために教育訓練やコミュニケーションをおこなう

7.4 コミュニケーション

  • 必要な情報を適切な方法で適切な時期に伝える必要がある
  • 内容、実施時期、対象者、方法、行う人について決定する
  • 文書化した情報の保持の要求はないが必要な記録は残しておく

7.5 文書化した情報

  • 文書化した情報は必要なときに入手可能で最新の状態にする
  • セキュリティ対策、バックアップなどで機密性・完全性を保護
  • 外部文書は必要に応じて識別、管理し、保護に注意を払う

8.運用

品質マネジメントシステムの運用についてです。組織の事業活動に関わる要求であり、各プロセスを運用していきます。

8.1 運用の計画及び管理

  • 必要なプロセスを計画、実施、管理することが求められている
  • 評価基準を目標として計画を立て文書化し、達成可否を評価する
  • プロセスの変更の際は、変更による有害な影響を軽減する

8.2.1 顧客とのコミュニケーション

  • 顧客とのコミュニケーションは非常に重要な役割を担う
  • 情報提供、受注活動、フィードバックの取得、顧客所有物の取り扱い、不測の事態の対応を必ず含める

8.2.2 製品及びサービスに関する要求事項の明確化

  • 顧客のニーズを把握し製品・サービスの要求事項を明確にする
  • 法規制要求事項と組織の要求事項を含めることを確実にする
  • 組織が製品・サービスに関し主張していることを確実に満たす

8.2.3 製品及びサービスに関する要求事項のレビュー

  • 顧客へ製品などの提供の約束前に5つの要求事項をレビューする
  • 顧客が受託前に書面で示さない場合は要求事項を確認する
  • 要求事項のレビューは文書化した情報として保持する

8.2.4 変更管理

  • 要求事項が変更されたら文書化した情報を確実に変更する
  • 変更後の要求事項が関連する人々に確実に理解されるようにする
  • 変更後の要求事項を文書化した情報で関連する部門に伝達する

8.3 製品及びサービスの設計・開発

  • 設計・開発の段階、管理決定にあたり考慮する事項を理解する
  • 設計・開発活動前に上記事項を考慮して計画を立てる

8.3.3 設計・開発へのインプット

  • 特定種類の製品・サービスに不可欠な要求事項を明確にする
  • 設計・開発の目的に適切で、漏れなく、曖昧でないこと
  • 複数のインプット間の相反を解決してから設計・開発を始める

8.3.4 設計・開発の管理

  • 達成すべき結果を定め、レビュー・検証・妥当性確認を行う

8.3.5 設計・開発からのアウトプット

  • インプットの要求事項を満たし、以降のプロセスに適切なこと
  • 安全で適切な使用・提供には不可欠な特性を規定している
  • 設計・開発のアウトプットは、文書化した情報として保持する

8.3.6 設計・開発の変更

  • 設計・開発の変更は組織がその変更を識別、レビュー、管理する
  • 製造・外注・顧客要求など、以降のプロセスでの変更も含む
  • 変更は、レビューの結果、許可者、処置を含め文書化して保持

8.5.1 製造及びサービス提供の管理

  • 製造及びサービス提供の管理は、もっとも重要な要求事項
  • あらかじめ定められた管理方法に従い管理された状態で実行する
  • 8つの要求事項のうち該当するものは必ず管理の内容に含める

8.5.2 識別及びトレーサビリティ

  • アウトプットの識別とは製品同士見分けられるようにすること
  • アウトプットの状態の識別とは検査、適合の状態を識別すること

8.5.3 顧客または外部提供者の所有物

  • 顧客や外部提供者の所有物を管理・使用する間は注意義務
  • 識別・検証を行い、紛失や損傷を防ぐために保護・防護する
  • 異常時は速やかに顧客または外部提供者に報告し、記録を保持

8.5.4 保存

  • 製品・サービスを提供する全過程でアウトプットを保つ義務
  • 識別、取扱い、汚染防止、包装、保管、輸送、保護などを考慮
  • サービス提供では顧客検証までアウトプットを保存・継続する

8.5.5 引き渡し後の活動

  • 製品・サービスに関する引き渡し後の活動の要求事項を満たす
  • 法令・規制、顧客要求事項などを考慮し、活動の程度を決める
  • 保証規定や契約上の義務での活動、付帯サービスが含まれる

8.5.6 変更管理

  • 製造及びサービス提供に関する変更の要素には4M変更がある
  • 変更は要求事項への適合を確認し、管理する
  • レビューの結果、許可者、生じた必要な処置を文書化して保持

8.6 製品及びサービスのリリース

  • リリースは製品などの次の段階に進めることを認めること
  • 計画した取り決めが問題なく完了するまでリリースしてはいけない
  • 基準への適合の証拠と、リリースを許可した人を文書化して記録

8.7 不適合なアウトプットの管理

  • 不適合なアウトプットは識別、管理することを確実にする
  • 不適合の性質、適合へ与える影響に基づき適切な処置をとる
  • 修正後は適語を再検証し、不適合については文書化し記録

9. パフォーマンス評価

計画に沿って運用され、意図した結果を挙げているかを検証するのがパフォーマンス評価です。

9.1 監視、測定、分析及び評価

  • 監視、測定、分析及び評価をする対象、方法、時期を決定する
  • 上記を実行することでパフォーマンス及び有効性を評価する
  • 報告書や会議記録などの適切な文書化した情報を保持する

9.1.2 顧客満足

  • 提供した製品などにより顧客の満足を監視しなければならない
  • 顧客満足の情報を入手し監視、レビューする方法を決定、実施
  • レビューにより品質マネジメントシステムを継続的に実施する

9.2 内部監査

  • 監査員は、規定の間隔で内部監査を行い結果を管理層に報告する
  • ISO 19011の指針に沿ってや7原則に基づいて公正に行う
  • 監査結果を分析・評価し、監査プログラムを維持・改善する

9.3 マネジメントレビュー

  • 一定の間隔で品質マネジメントをレビューする
  • 継続的改善を判断するための重要な情報をインプットする
  • トップマネジメントは継続的改善のための指示をアウトプットする

10. 改善

改善の機会に取り組み、不適合に対して是正処置を行い、システムを継続的に改善することです。

10.1 一般

  • 顧客要求事項を満たし、顧客満足を改善する機会を選択し取り組む
  • 品質・サービスの改善だけでなくシステムの改善も実施する
  • 修正、是正措置だけでなく現状打破・改革的な取り組みも改善

10.2 不適合及び是正処置、継続的改善

  • 不適合薬事や苦情が発生した時、再発防止のためのその施策を有効なものにするには?

 

  • この記事を書いた人

けびん

30代前半、製造現場の最前線で管理者を務めています。 文献や実践から得られた学びをこのブログを通じてみなさんと共有していきたいと思います。

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