
・生産現場のリーダーシップに必要な要素とはなんだろうか?
・生産現場でチームをまとめる立場になったけど、どういう行動をとったらいいのだろうか?
そう考える方も多いかと思います。
この記事では、生産現場の最前線で管理者をつとめるわたしが、ノンテクニカルスキルについて解説していきます。
もちろん管理者ではなく、小さいチームで活動する場合も有効ですので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
・ノンテクニカルスキルにおける「リーダーシップ」の概要がわかる
・リーダーシップの4つの要素と4つの主要理論がわかる
ノンテクニカルスキルとは?
ノンテクニカルスキルとは、テクニカルスキル(業務に直結した専門知識や技量)とは異なり、「状況認識」「コミュニケーション」「リーダーシップ」「疲労管理」などヒューマンエラー発生を避け、安全を確保していくために現場スタッフが持つべきスキルです。
また生産現場のようなハイリスクな環境でのチーム活動に必要な要素を分類していくと、以下の6つのカテゴリーに分かれることが分かっています。

ノンテクニカルスキル一覧
産業ごとに多少のカスタマイズは必要ではあるものの、これらを訓練し身に付けていくことが必要です。
ノンテクニカルスキル「リーダーシップ」とは?
リーダーシップとは、メンバーの活動を指揮、調整し、協力を促し、勤務成績を評価し、仕事を割り当て、前向きなチームの雰囲気を作り出すこと、と定義されています。
チーム内のメンバーの考えや行動は、リーダーの考えや行為に影響されます。
このリーダーシップスキルはチームリーダーだけでなく、他のメンバーにも必要なスキルです。
チームにおいては、必要に応じて権限を行使し、計画し、優先順位決めを行い、業務負荷や資源の配分を行います。
リーダーシップに必要な4つの要素

リーダーシップの4つの要素
効果的なリーダーシップのためには、連携や説得を通じて、やる気に満ちた、十分に機能するチームを導き、安全に業務を遂行するように促す必要があります。
そのためのスキルを以下に述べていきます。
権限の行使
自分の主張とメンバーの関与のバランスをとり、状況によって要すれば行動する準備をしておくことです。リーダーは安全に業務を遂行するためにいつ権限を行使するべきか理解する必要があります。
標準の維持
標準の維持とは、必要な標準を順守するためのものです。
例えば、作業遂行のための標準作業手順(SOP)や他のメンバーが標準から逸脱しそうな時に監督・介入することです。
計画と優先順位づけ
計画と優先順位づけとは、適切な計画手法や優先順位付け手法を用いてマネジメントと権限移譲を行い、可能な限り高い成果を達成する、ということです。
計画や意図をメンバーに伝達しながら、調整することも含まれます。
業務負荷と資源の管理
リーダーは自身だけでなくチームの業務負荷や資源を管理する必要があります。
業務負荷を生じさせる基本的な要素の理解と、業務負荷の急変を避けるための作業配分スキルを伸ばすことが含まれます。
軍隊のチーム研究から得た、リーダーシップに必要なスキルは以下の通りです。
リーダーシップに必要なスキル
- 社会的な構造を定め、オープンなコミュニケーションを促し、チームの団結を生み出すために自己開示を行う
- 効果的にコミュニケーションをとり、チームパフォーマンスに影響する事項をメンバーに伝達する
- チームを設計、構築、調整する
- 業務に集中するようにチームを維持する
- メンバーから情報提供を求め、潜在的な問題をオープンにして討論する
- 状況認識を保つことで、チーム内の結束を維持する
- メンバーに対して、フィードバックを行う。
- チームの成長に合わせてメンバーの役割を変えていく
- チームの目標と業務を定義し、促すことで責任や意見の一致を促す
これらのスキルに基づき、チームリーダーは以下表に示す問題解決行動をとっていく必要があります。
要因 | 下位要素 |
---|---|
情報探索と構造化 | 情報の獲得、情報の体系化と評価、フィードバックと制御 |
問題解決時の情報利用 | 要求事項の明確化、計画と調整s、情報伝達 |
人材管理 | 人材の調達と配分、人材育成、人材の動機づけ、人材利用 |
物的資源の管理 | 資源の調達と配分、資源の利用 |
リーダーシップに関する主要な理論
リーダーシップの主な4つの理論を紹介します。
特性論
リーダーシップの源泉として、特徴的な身体的・心理的特長が存在するといわれています。
リーダーでない人と比べてリーダーが高い点を示す特長は以下の5つです。
- 知力
- 支配力
- 自信
- エネルギー/粘り強さ
- 仕事の知識量
もちろん上記の項目だけで決まるわけではなく、成功したリーダーの調査から集めたため、例外もありえます。
スタイル理論
リーダーの管理スタイルに焦点を当てたものであり、3つの基本的なリーダーシップスタイルが存在します。
指示命令型
中央集権的支配を行い、仕事のやり方を指示し、一方的に決定を行い、従業員の関与を制限するスタイルです。
参加型
従業員の意思決定を許容し、権限委譲を行い、仕事のやり方や目標の決定を促すスタイルです。
放任型
リーダーとしては最低限の関与にとどめ、従業員に意思決定を自由に行わせ、要求があれば質問に答えるスタイルです。
これらの理論もリーダーの行動の一部を表現しているだけであり、また特性論と同様、この方法は周囲の状況を考慮していません。
条件即応理論(状況対応理論)
条件即応理論とは、すべての状況に対応する唯一の効果的なリーダーシップスタイルというものは存在せず、スタイルは状況に応じて変化する必要がある、という考え方に基づくものです。
リーダーシップの効果は、部下の成熟度に応じてリーダーシップスタイルを合わせることで決まると主張されています。
その4つのスタイルを以下に示します。
リーダーシップの4つのスタイル
部下に対して多数の支持を与え、役割や目標を決めることに大いに注目することにより特徴づけられます。能力は低いが意欲のある新人スタッフや、単調作業を繰り返す職場などを扱うのに最も適しています。
・説得型(高課題、高人間関係行動)
リーダーによってほとんどの指示はなされるが、部下にそれなりのの応力があるのに参加態度にむらがあるとき、仕事の主導性を自分でとるように促すものです。
・参加型(高課題、低人間関係行動)
意思決定はリーダーと部下(チームメンバー)で共有されます。リーダーの役目は支援と情報伝達です。
・委任型(低課題、低人間関係行動)
リーダーは問題点や課題をはっきり伝えるが、メンバーの能力も意欲もともに高ければ、対応の実行責任は部下に与えます。
ここで状況に応じたリーダーシップをとるために重要な要素を以下に示します。
ココに注意
- 低い階層の管理者ほど参加型リーダーシップをとらず、技術的なことに焦点を当てたり、部下の行動を監視したりします。
- 生産現場の管理者は、間接部門に比べて独裁的であり、参加型態度を示さないことが多いです。
- 仕事が構造化するにつれてリーダーは指示型となります。
- リーダーは部下の数が増えるほど参加型ではなくなり、独裁的になり、部下への配慮や援助を示さなくなります。
- ストレスがマスト、リーダーは指示的になり、タスク指向性が増し、配慮型ではなくなります。
- 部下のパフォーマンスが低下したときに、リーダーは閉鎖的、指示的となり、懲罰的になりやすい。
交換的・変革的理論
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交換的・変革的リーダーシップの増幅効果
リーダーシップ理論の最新の考え方が、交換的・変革的リーダーシップ理論です。
このリーダーシップの2つのスタイルについて述べていきます。
交換的リーダーシップ
- 努力に対して報酬を与えることを契約する。業績をきちんと認める。
- 規則や標準からの逸脱を監視・探索し、是正措置を講じる
- 標準が守られない時のみ介入する
変革的リーダーシップ
- ビジョンとミッション意識を与える
- 大きな期待感を与える。シンプルなやり方で重要な目標を表現する
- 合理的な行動、注意深い問題解決を推進する
この2つのスタイルを組み合わせて用いるべきだと言われています。
変革的リーダーシップは部下の満足度・やる気・パフォーマンスに関して効果的であることが示されています。
リーダーが変革的スタイルであるほど、職場において不安全行動や事故が少ないという事実もあります。
まとめ
今回の記事はいかがでしたか?
リーダーシップはチームワークの形成に不可欠な要素です。
スキルや理論に基づいた行動を起こし、チームとリーダーの結びつきを高めていきましょう。
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