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m-SHELモデルとは?ヒューマンファクター工学にもとづくエラーの6つの要素を解説

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お悩み社員

・ヒューマンエラーが続いているけど、ミスした人を責めて再発が防げるものだろうか?

・ヒューマンエラーを減らすためには原因をどう考えたらよいのだろうか?

・考え方の「型」がわかればもっとすんなり考えられるはずなのに、よくわからない。

そう考え、悩まれる方も多いと思います。

今回はその疑問に答えるために、ヒューマンエラーの発生要因を示す概念モデル「m-SHELモデル」について解説していきたいと思います。

ヒューマンエラーによる事故がクローズアップされていく中で、人間がエラーを起こしにくい環境を整えることの重要性が高まってきており、ヒューマンファクター(人的要因)による問題を解決するために、ヒューマンファクター工学が定義されました。

この記事の内容

・ヒューマンファクターのモデル「m-SHELモデル」の概要を学ぶことができる

・失敗した人自身に目を向けるのではなく、周りのどんな環境に目を向ければヒューマンエラー再発防止へ向けた建設的な議論ができるかわかる

この記事を書いているわたしは、m-SHELモデルの考え方を職場内で共有することで、「失敗した人を責める文化、失敗することは後ろめたい文化」から「失敗した人を取り巻く環境をどう改善するか考える文化」へ好転させることができつつあることを体感しています。

今回はその定義と考え方を理解して、よりよい職場風土をつくっていきましょう。

m-SHELモデルとは?その定義

東京電力の河野氏が提唱するm-SHELモデルは、ヒューマンファクター工学の概念をわかりやすく説明しています。

もとはEdwardsやF.H.Hawkinsが「SHELモデル」として、提案していたものをm-SHELモデルとして発展させたものです。

m-SHELモデル

m-SHELモデルの概念図

作業する人を中心に、その周りにある要素(ハードウェア、ソフトウェア、環境、周りの人)を表したものです。

その一覧を以下の表に示します。

要素例示
L:Liveware(中心のL) 本人身体的状況
心理的・精神的状況
能力(技能・知識)
H:Hardware ハードウェアマシンインターフェース
機器の設計
機器・配管の配置
S:Software ソフトウェアマニュアル
手順書
教育・訓練用教材
E:Environment 環境作業環境(照明・騒音)
作業特性(非定常作業、起動・停止作業)
L:Liveware(下のL) 周囲の人コミュニケーション
リーダーシップ
チームワーク
m:management 管理組織・体制
職場の雰囲気づくり
安全文化の醸成

m-SHELモデルのポイント

ポイントは以下の2つです。

m-SHELモデルのポイント

  • 中心に人間を置いていること
  • それぞれの要素が中心の人間と隣接して表現されていること

つまり隣接する要素同士がうまくかみ合っていないとヒューマンエラーが発生しやすくなることを表しています。

中心の「L」は体調や疲労で状態が容易に変わります。また、加齢により徐々に、しかし大きく変化します。

ソフトウェアに「S」にしても、作業内容や手順の改定、作業要領書の様式変更もしばしばあることです。

ハードウェア「H」は、道具の摩耗や、機械の故障、また部品の交換などで状態は同じであり続けることはありません。

環境「E」に関しても当然昼夜、天候、作業環境などが常に変わります。

中心の「L」と周囲の「SHEL」とのマッチングをとるために、全体を眺めてバランスをとるのが「m」のマネジメントです。

人間側から機械や手順書に歩み寄る、つまり訓練や教育でいまあるシステムを使いこなすか、または機械や手順書側から人間に歩み寄る、つまり人間の特性を考慮して設備の設計をする策をとるか、管理者層が判断を下していきましょう。

特に人材不足が叫ばれる昨今では、訓練や教育一辺倒で対応することは困難であり、機械を操作する側に立って、操作する人が間違いにくい、操作しやすい作業環境を用意することが重要です。

人間中心のシステムを構築するメリット

システムをより人間中心的にすることで、多くの経済的、社会的利益がもたらされる傾向にあります。

システムのユーザビリティを上げることでのメリットは以下の通りです。

人間中心のシステムのメリット

  • 理解および使用を容易にし、訓練およびサポート費用を削減する
  • ユーザー満足度が上がり、不満とストレスが解消
  • ユーザーの生産性および組織の運用効率が改善
  • 製品の品質が改善し、商品の競争力を有利にできる

まとめ

今回の記事は「m-SHELモデルとは?ヒューマンファクター工学にもとづくエラーの6つの要素を解説」について書いてきました。

人間中心に設計することで、システムを単に使いやすくするだけでなく、ムダな時間を省き合理的に活動ができます。

そしてパフォーマンス向上や生産性向上にもつながります。

人間の特性に合わせて周りの環境を変えていくことを目標としましょう。

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  • この記事を書いた人

けびん

30代前半、製造現場の最前線で管理者を務めています。 文献や実践から得られた学びをこのブログを通じてみなさんと共有していきたいと思います。

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