生産性・仕事術

MOTとは?技術屋が学ぶべき技術経営の概要と方法論を解説

MOTって聞くけど、非常にわかりにくい。どうやって活用したらいいものなんだろう?

そう考え、悩まれる方も多いと思います。

今回はその疑問に答えるために、技術者ならば知っておきたい「MOT(Management of Technology)」について解説していきたいと思います。

この記事の内容

・技術経営の方法論である「MOT(Management of Technology)」の概要を学べる
・技術に携わる者としての注意点

この記事を書いているわたしは、職場をマネジメントする立場としてこの考え方を基礎に、組織運営に役立てています。

実務者、管理者、経営層、どの立場でも必要な考え方です。

今回その考え方の概要を理解し、よりよい技術屋を目指していきましょう。

MOTとは?その定義と当事者

技術は、顧客の望むものを提供するための手段です。

MOTとは、技術を武器としてイノベーションを起こすための経営のあり方のこと。

イノベーションのプロセスは、主に以下の3つのステップが積み重なっていることが多いです。

  1. 筋のいい技術を育てる
  2. 市場への出口をつくる
  3. 社会を動かす

さまざまな専門を持った技術者たちが共同作業をするプロセスである。

顧客のニーズに沿うために、開発チームだけでなく営業や生産の現場をも巻き込んだ集団にまとめていくことが必要です。

また広く社会へアピールするべく他人を動かすことです。

つまり「大勢のひとに自分が望ましいと思うことをしてもらうこと」が技術経営には重要です。

筆者
MOTとは、「他人にいかに適切な学習活動をやってもらうか」だね!

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MOTの当事者は?

  • 技術開発のプロジェクトリーダー
  • 研究所長や研究組織のマネジャー
  • CTO

など、どの階層であっても使える考え方です。

筆者
管理者も実務者も、みな当事者なんですね!

MOTのやり方とコツ5つ

MOTのやり方は概念・抽象的なもの。

おおまかには以下の3つをマネジメントしていかなければなりません。

  • 技術を蓄積する
  • 筋のよい技術を見きわめる
  • 技術の俯瞰図をもつ
  • ポートフォリオ思考を持つ
  • いいコンセプトを決める

方法①技術を蓄積する

技術の育て方には2つあり、

  • 研究開発による技術蓄積
  • 日々の事業活動の中での技術的仕事を実行することで学習した結果、蓄積した技術

ここで注意すべきは、学習による蓄積を軽視してはいけません。

下請けなどに「手配することを得意とする」がいますが、やりすぎは禁物。

手を動かさないと知識や経験の蓄積がストップしてしまうことに注意です。

筆者
あるカテゴリの開発や生産をアウトソーシングするのはよいが、一部は学習のために親企業でも自社開発・生産しましょう。

方法②筋のよい技術を見きわめる

自社で蓄積すべき技術を見極めることも重要です。

なんでもかんでもやみくもに技術を蓄積するわけでなく、リソースには限りがあるので「筋のよい技術」を選ばなければなりません。

「筋の良い技術の条件」

  1. 科学の原理に照らして、原理的深さを持つこと
  2. 社会のニーズの流れに照らして、人間の本質的ニーズに迫っていること
  3. 自社の戦略に合致し、事業として展開のポテンシャルが大きいこと
  4. 技術を担う人材が存在すること
筆者
ニーズや原理的な広がりを把握するのも大切だけど、人材育成が大切!

方法③技術の俯瞰図をもつ

まず自社が獲得すべき技術の「俯瞰図」を作成しましょう。

技術の俯瞰図の持ち方

  1. 科学の本質的動向を把握する
  2. 産業の技術的進歩の大きな地図を描く
  3. 社会のニーズの大きなうねりを察知する
  4. 自社の発展方向のビジョンを構想する

具体的には、日経新聞などの購読で社会ニーズのうねりをつかむ、産業の技術進歩の大きな地図を描くことなど大切です。

さらには向こう5年、10年のロードマップを描くことが大切です。

ただし液晶テレビをとにかくミリ単位で薄くしていく、のように技術者のひとりよがりのロードマップになってはいけませんよ。

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筆者
無料なのに十分使えますよ!

方法④ポートフォリオ思考を持つ

MOTとは、Management of Themeと考えるべき、という言葉があるくらい、テーマ選択が重要です。

テーマ単独の良し悪しではなく、個々のテーマの組み合わせの中で考えるとよいでしょう。

テーマのポートフォリオを考える3つの視点

  1. 成果
  2. 動機
  3. 成功確率

成果主義といえど、動くのは人。

成果や成功確率だけでなく、人材育成の観点からどんなスキルを習得させるかを考慮しながら計画を立てていかなければなりません。

また短期的な事業貢献に対応していきつつ、以下の成果のb.や成功確率のb.の考え方も取り入れつつテーマを策定しましょう。

成果のポートフォリオ思考

  • a.市場需要は大きく見積もられているが、蓄積波及効果は少ない
  • b. 市場需要はそれほど大きくないが、蓄積波及効果は大きい
  • c. 市場需要も蓄積波及効果も中程度

動機のポートフォリオ思考

  • a. 事業上の必要が強いから、やりたい
  • b. 科学や社会の進歩に貢献するから、やりたい
  • c.研究者の知的好奇心として、やりたい

成功確率のポートフォリオ思考

  • a.成功確率は高いが、技術の革新性が低い
  • b.成功確率は低いが、技術の革新性は高い
  • c.成功確率も技術の革新性も中程度

ここに関しては実務者が希望を述べやすいよう面談したり、長期的なスキル取得計画を会話することが大切ですね。

筆者
実務者自身も事業や技術蓄積への貢献度も考慮しながら、年度の節目などでやりたいことを主張していきましょう。

方法⑤いいコンセプトを決める

いいコンセプトの条件とは、以下の3つです。

  • 聞いて驚き、使って驚くという伝染効果があること
  • 驚くだけの技術と仕組みの裏打ちがあること
  • 許容範囲内の価格設定であること

これらのコンセプトを創造するのは並大抵の努力でできるものではありません。

シーズとニーズの相関構想力、簡潔な言葉で表現する言語表現力、コンセプトを体現する技術力の3つを意識しましょう。

コンセプトがよいほど、技術開発のハードルは高くなります。

ビジネスモデルを考慮すること3つ

ほぼ経営学でも学習することですが、技術者として以下のことに留意すべきです。

注意点①ビジネスシステムをつくるのに必要なこと

  1. 何を自分が行うか、何を他人に任せるか
  2. 自分で行うことを、どのように行うか
  3. 他人に任せることを、どのようにコントロールするか

注意点②収益のモデルをどうするか

  1. 本体そのものの売り上げで儲ける
  2. 本体の使用に必須の関連製品(消耗品やソフト)の売り上げで儲ける
  3. 本体のメンテナンスなど利用関連サービスの売りあげで儲ける
  4. 本体の使用が生み出す蓄積をベースにしたサービスを別な人に売って儲ける

注意点③イノベーションを継続する

  1. 最初に3つのコンセプトを考える
  2. カリスマリーダーから全員経営へ移行する
  3. 破壊行為の継続性には、次の条件を加えればよい

実践の中で学んでいくことが多数にはなりますが、過去の成功例・失敗例を学んで同じ失敗を踏まないことが大切ですね。

例として以下の事例。教材は無数にあるので経営学の本を読んでみるとよいでしょう。

  • ソニーのウォークマンに対抗したアップルのipod(すべての音楽を持ち運ぶコンセプト)
  • 旧来の一式買い替えのカミソリに対抗したジレットの替え刃モデル(継続的な収益が得られるモデル)
  • グーグルの広告収入モデル

▼体系立った経営の基礎

技術者が間違えてはならないこと

技術者として間違えてはならないことは以下の3つです。

  • 技術がよければ売れるという思い込み
  • 自社技術だけが進歩するという思い込み
  • 社内では新技術、世界では二番煎じ

とにかく「井の中の蛙」状態におちいってしまうと、上記のような思い込みを起こしやすいのです。

特別なケイパビリティ(圧倒的な物流網、巨大な生産設備、強力な営業体制などの実行能力)を整えるビジョンを持っていないと、売れなかったりマネされてしまったりするわけです。

多角的に事業モデルを見つめていかなければなりませんね。

まとめ:経営と技術は一体で考えるもの

MOT自体が高度なマネジメント業務ですから、わたし自身もまだまだ初級者かもしれません。

  • 技術革新をリードする、技術を理解した経営者・管理者
  • 経営者の視点を持ち、技術革新の実務を主導する技術者
  • 技術革新を支援する知財担当者、コンサルタント

など高い専門性と高い視座が必要なマネジメント業務なのでしょう。

日々自身の事業部門の外も含めて幅広くビジネス知識を学んでいきましょう。

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  • この記事を書いた人

けびん

30代前半、製造現場の最前線で管理者を務めています。 文献や実践から得られた学びをこのブログを通じてみなさんと共有していきたいと思います。

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