必要性を普及させるのが難しい、指差呼称の目的・効果について解説していきます。
・職場で指差し呼称が普及しないな ・みんな毛嫌いするんだけど、どうしたら指差呼称の良さに気付いてくれるのだろうか?
そんな悩みに応えます。
指差呼称は、工場や現場において自分自身の身を守る有効なツールです。
設備やシステムで安全を担保しエラーの確率を下げることは大切ですが、設備やシステムの設計段階で予見していない外乱が起こった場合には「人」の柔軟性に頼らなくてはいけません。
「人」の危険予知力を高めていくこと。
その手段のひとつとして有効となる、指差呼称の必要性を訴えるための情報をまとめました。
なぜ指差呼称を必要ないと思うのか?
なぜ指差呼称を必要ないと思うのか?その原因は2つです。
ものごとを習得するには「知識」と「スキル」が大切となりますね。
- 知識:指差呼称の成り立ちについてよく知らないから。またどんな時に効果的に作用するかをよく知らないから。
- スキル:体に染み付いていないから。
2については、定期的に意識づけ・振り返りをして、正しいやり方ができているかを確認するなどして実践を積み重ねるのがよいでしょう。
ただしその意識づけや振り返りをしていく上で、まずは指差呼称の必要性について教育・議論していきましょう。
次に指差呼称の歴史や効果・目的について調べたことをまとめました。
指差呼称(指差喚呼)とは?その発明の歴史
指差呼称(指差喚呼)の誕生は、明治時代にまでさかのぼります。
運転士が信号を見たときに、それを声に出して確認する「信号喚呼」を自主的に始めたのがはじまりです。
出発信号を見て「進行(緑)」だも思うだけでなくら「出発進行」と発声することで、しっかりと確認する、あるいは確認するという作業を忘れずに伝えると気づいたのでしょう。
また蒸気機関車では、機関士の隣に石炭をくべる機関助士がいますので、2人で声を出して確認し合う「喚呼応答」という作業方法が考え出されました。
助士が「○番線出発」と問いかけ、機関士が信号の表示を見て「進行」と言い、助士がそれを検証して「○番線出発進行」と確認します。
ダブルチェックが確実に行われるように形式したのですね。
昭和になってから、信号喚呼・喚呼応答が指差呼称となり、全国に拡がりました。
いろいろな職種の鉄道員がこれをまねして、線路を横断するとき、スイッチを切り替えるときなど各種の作業で指差喚呼がさかんになりました。
指差呼称・指差喚呼の目的4つ
JRで始まった指差呼称・指差喚呼の目的は以下の4つです。
- 信号、表示灯、計器などの表示や状態を間違いなく読み取るため
- これから操作するスイッチやボタンを、他のものと取り違えないようにするため
- 操作した後に、操作の意図のとおりになったこと、間違いなく操作したことを確かめるため
- 作業マニュアルやチェックリストを読むときに、その指示をしっかり頭にたたき込むため
JR西日本での実験では、指差呼称をすると、何もしないで操作する場合に比べて、エラーが6分の1になりました。
職場だけでなく、ご家庭でもレシピを見ながら「しょうゆ、おおさじ3、塩、小さじ1」などと指差呼称してはいかがでしょうか。
職場も料理も共通して言えますが、実行したら後戻りしにくいと感じる作業の前など要所で活用することが大切です。
情報処理におけるミスをなくすためにも有効
イギリスの心理学者リーズン博士は
- 包括的エラー・モデリング・システム(GEMS)
というものを作りました。
このシステムで分類される6種類のミスは、すべて注意の働きが失敗して起きています。
- 意図しない動作の起動: 習慣的にからだが動いてしまうミス
- 妨害で混乱: 動作の流れの途中で妨害が入った後におかすミス
- 意図の見失い: 動作の意図を途中で忘れてしまう
- 取り違え: 動作の対象に対する注意が不足して起きる
- 動作の混線: 途中で別の動作に乗り換えてしまう
- 無意識的モニターの狂い: 動作の省略、繰り返し、逆転
これらは十分な注意を払えばミスを起こさなくてすむものです。
このケースでも、指差呼称が有効に作用します。
ただし、しっかりと注意力を高めていても気づきにくいレベルの計画段階の間違いに対して個人を責めることはできません。
組織・集団全体で方向性を見誤っていた場合も同様に、個人の力に頼っても間違えてしまうでしょう。
すべてのエラー・ミスに使えるわけではなく、いわゆるうっかりミスに効果的であることを覚えておいてください。
また計画段階のミスや設備設計のミスが根本原因なのに、「指差呼称の取り組み強化」のような行動指針を立ててしまう、なんてことはあってはいけません。
あくまで自分の身を守るためのツールとして使うよう教育していきましょう。
まとめ
今回「指差呼称は必要ない?それでも必要な理由とその効果を解説」と題してまとめました。
信号確認のミスをなくすため、現場の鉄道員が自分たちのために考え出したのが指差呼称(指差喚呼)です。
人間の目による確認や、手動操作のミスを減らす優れた対策として認められ、今では広く産業界で行われています。
日本発祥の誇れるこのツールを職場に広めていきましょう。
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