衛生管理

定期健康診断とは?労安法が定める健康管理を解説

普段何気なく受信していた職場での定期健康診断ですが、これについても労働安全衛生法で明確に定められています。

職場のメンバーの健康管理の面でもしっかり受診していることを確認しておきたいところです。

労安法上での「定期健康診断」とは何かを確認していきましょう。

定期健康診断とは?

事業者は、常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に医師による健康診断を行わなければなりません。
常時働く人だけが対象です。

定期健康診断の検査項目は以下の通りです。

  1. 既往歴および業務歴の調査
  2. 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
  4. 胸部X線検査検査及びかくたん検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査
  7. 肝機能検査
  8. 血中脂質検査
  9. 血糖検査
  10. 尿検査
  11. 心電図検査

また、例外として定期健康診断には以下の省略可能な項目があります。

  • 身長検査(20歳以上の者は省略可)
  • 腹囲の検査
  • かくたん検査
  • 貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査

特殊健康診断とは?

特殊健康診断とは、特殊な環境下で働く人がその作業によって健康を害することがないように、実施しなければならない健康診断です。

政令や行政指導により実施が奨励されている業務(VDT作業、振動、紫外線など)が対象です。

政令で定める業務は以下の通りです。

  1. 高圧室内作業及び潜水業務
  2. 電離放射線業務
  3. 特定化学物質のうち第1類物質及び第2類物質の製造・取扱業務
  4. 石綿を取り扱う業務
  5. 製造等禁止物質を試験研究のために製造し取り扱う業務
  6. 鉛業務(隔離室において遠隔操作によって行う業務を除く)
  7. 四アルキル鉛等業務(同上)
  8. 屋内作業場等において有機溶剤を製造し取り扱う業務(第3種有機溶剤等にあっては、タンク等の内部の業務に限る)

特定化学物質:第1類物質、第2類物質、第3類物質があります。

製造等禁止物質:黄りんマッチ、ベンジジンなどです。

各業務ごとの実施間隔と記録の保存期間は以下の通りです。

特殊健康診断
種類実施間隔記録の保存期間
高気圧業務健康診断6か月以内5年間
電離放射線健康診断6か月以内30年間
除染等電離放射線健康診断6か月以内30年間
特定化学物質健康診断6か月以内5年間
鉛健康診断6か月以内5年間
四アルキル鉛健康診断3か月以内5年間
有機溶剤等健康診断6か月以内5年間
石綿健康診断6か月以内40年間

健康診断の結果に基づき、所轄労働基準監督署長へ報告書を提出しなければなりません。

特殊健康診断の場合は、使用する労働者数に関わらず有害業務に従事させる場合には報告書の提出は必須です。

また特殊健康診断の主な検査項目は以下の通りです。

種類主な検査項目
高気圧業務健康診断耳鳴り、聴力検査、肺活量の測定
電離放射線健康診断白血球数検査、赤血球数検査、血色素量またはヘマトクリット値検査
除染等電離放射線健康診断同上
特定化学物質健康診断取り扱う物質の種類に応じて決められている
鉛健康診断血液中の鉛の量検査、尿中のデルタアミノブリン酸の量の検査
四アルキル鉛健康診断血色素量または全血比重の検査、好塩基点赤血球数。尿中コプロポルフィリン検査
有機溶剤等健康診断尿中の淡白の有無の検査
石綿健康診断胸部X線調節撮影による検査

鉛の健康診断と四アルキル鉛健康診断の比較

鉛の健康診断と四アルキル鉛健康診断の比較
項目鉛健康診断四アルキル鉛健康診断
実施間隔6か月以内3か月以内
主な検査尿中のデルタアミノレブリン酸の量血色素量または全血比重、尿中のコプロポルフィリン
記録の保存5年間5年間
労働者への通知
監督署への報告要(遅滞なく)要(遅滞なく)

 

有機溶剤の種類別特徴

第1種有機溶剤第2種有機溶剤第3種有機溶剤
色別区分表示
代表的な物質・二硫化炭素・エチルエーテル、トルエンガソリン、石油ナフサ、テレビン油
特殊健康診断
作業環境測定×
作業主任者の選任

健康診断実施後の措置とは?

事業者は、健康診断の結果、異常があると診断された労働者について、当該労働者の健康を保持する措置に関し医師または歯科医師の意見を聴かなければなりません。

また、労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮すべき労働者に対して、医師による面接指導を行わなければなりません。

その措置の具体的な方法は以下の通り。

  • 医師等からの意見聴取

健康診断実施後3ヶ月以内に医師等の意見を記録

  • 健康診断実施後の措置

就業場所の変更、作業環境測定の実施、施設等の整備、衛生委員会への報告

  • 健康診断の結果の通知

健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく

  • 保健指導等

医師または保健師による指導

 

健康管理手帳とは?

重度の健康障害を引き起こす恐れのある業務に従事した労働者のうち、厚生労働省令で定める要件に該当する者には、離職の際または離職後に健康管理手帳を交付する必要があります。

労働者の申請に基づき、都道府県労働局長が発行します。

この健康管理手帳の交付要件は以下の13個です。

健康管理手帳の交付要件
交付業務交付要件
ベンジジンおよびその塩の製造・取扱業務業務経験3か月以上
ベータ―ナフチルアミンおよびその塩の製造・取扱業務同上
ジアニシジンおよびその塩の製造・取扱業務同上
1・2-ジクロロプロパン取扱業務業務経験2年以上
ビス(クロロメチル)エーテルの製造・取扱業務業務経験3年以上
ベンゾトリクロリドの製造・取扱業務同上
クロム酸・重クロム酸およびこれらの塩の製造・取扱業務業務経験4年以上
塩化ビニルの重合業務およびポリ塩化ビニルの分離業務同上
三酸化ヒ素の焙焼・精製等の業務業務経験5年以上
コークスまたは製鉄用発生炉ガスの製造業務同上
粉じん作業に係る業務塵肺管理区分が管理2または管理3であること
ベリリウム及びその化合物の製造・取扱業務両肺野にベリリウムによる結節性陰影があること
石綿の製造・取扱業務両肺野に石綿による陰影または胸膜肥厚があること。業務経験1年以上。

まとめ

今回は「定期健康診断とは?労安法が定める健康管理を解説」と題してお話してきました。

新入社員や転入者が配属するとき、取り扱う作業が変更となるとき、などの場面では読み返していただき確認してくださいね。

  • この記事を書いた人

けびん

30代前半、製造現場の最前線で管理者を務めています。 文献や実践から得られた学びをこのブログを通じてみなさんと共有していきたいと思います。

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