
・生産現場のリスクについて、原則を確認しておきたい。リスクはすべて対処しなければならないのか?どこまで我慢すればいいのだろうか?
・危ないと提案されたものをすべて対策しようとするのは無理だし
そんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
日本社会ではまだまだ「リスクのないこと」を安全と考えられていますが、世界的には「安全は許容不可能なリスクがないこと」という定義がなされ、受け入れられるリスクのレベルとするのを「安全」と呼んでいます。
そんな方々へ向けて「リスク」の考え方の解説をいたします。
リスクを取り扱う上でALARPの考え方が大切です。ぜひ最後までお付き合いください。
ALARP(幅を持った安全目標)とは?
ALARP(As Low As Reasonably Practicable:合理的に実行可能な範囲)とは、コストが正当化される範囲でリスク
図に示すように、規制値と目標値の間の領域は「がまんできる領域
この領域ではリスク低減努力に要するコストと効果のバランスを考
また、「許容できない領域」ではいかなる努力を払ってでもリス
「許容できる領域」では、リスクは無視できると考えて、それ以上
このように、許容限度を満足しているかどうかを、100%の確信

リスクの影響度が大きすぎるものは、予備機や予備品を持つ、安全設備を追加する、などの対処をしましょう。
日本と欧米の安全に対する考え方の比較
日本と欧米では、まだまだ考え方の差が生じたままです。
日本の考え方 | 欧米の考え方 |
災害は努力すれば、二度と起こらないようにできる | 災害は努力しても技術レベルに応じて必ず起きる |
災害の主原因は人である | 災害防止は技術的問題である |
管理体制をつくり、人の教育訓練をし、規制強化により、安全を確保できる | 人は必ず間違いを犯すものであるから、技術力向上なしに安全は確保できない |
安全衛生法で規制。災害が発生するたびに規制を強化 | 事故が起こっても、重大災害に至らない技術対策 |
安全は、基本的にただ(無料)である | 安全は、基本的にコストがかかる |
最低限のコストで対応し、災害対策の技術的深耕をしなかった | 危険源を洗い出し、リスクを評価してコストをかけ、災害の低減努力をする |
見つけた危険をなくす技術 | 論理的に安全を立証する技術 |
災害度数率(発生件数)の重視 | 強度率(重大災害)の重視 |
日本は小さな事故を起こさないための技術に長けている一方で、欧米は重大事故に対する力の入れ方が大きいことがイメージつくかと思います。
これらの考え方の差は、以下の差からきています。
日本は「ボトムアップ方式」:危険予知、ヒヤリハット、5S活動などに基づく強い現場力に頼る
欧米は「トップダウン方式」:優れた技術者が決めたルール通りに運転し、ミスや故障を前提として機械・設備に頼る
リスクの許容限度の設定方法
リスクの許容限度とは、その名の通り許容可能なリスクの限界値のことです。
安全目標を設定するにあたっては、必ず考えなくてはならない難問
許容限度の設定方法
・リスクを負うことによって得られる利益とのバランスを考えるこ
・人為的な原因によるリスクの許容限度を決めるときに、その原因
・社会的に許容されるリスクは許容しても構わないという考え方で
リスクの保有と移転
可能な限りの努力を払ってリスク低減を行ったとしても、確率論的
ゼロにならずに残っているリスクを残留リスクと呼びます。
この残留リスクの対処方法には「保有」と「移転」の2つがありま
リスクの保有とは?
保有とは、残留リスクを無視できるものと考えて、損害の発生を許
高頻度で損害規模がきわめて小さい領域では適用できます。
しかし発生確率が小さくても損害規模が大きい領域では、損害賠償
リスクの移転とは?
移転とは、リスクを他人あるいは他組織に転嫁することです。
一般的に、保険をかけることでリスクを転嫁する制度が社会的に確
絶対的な安全は存在しない
化学技術はもともと災害などの自然がもたらすリスクに立ち向かう人間の特性から生まれたものであり、「絶対安全」を約束することはできません。
つまり世の中にリスクの無いものはありません。
生産現場ではリスクの大きさを適切に評価して、リスク低減に努めていかなければなりません。
職場のメンバー間でこの感覚を共有することが大切です。
「がまんできるもの、できないもの」とはどんなものかをメンバー間で議論していきましょう。
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ALARPの範囲の安全状態を確立するために、リスクを定量的に評価しましょう。
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