
安全文化とはどういう定義なの?
安全、安全って周りが騒ぐけどどういう状態を目指せばいいのかわからない。
そんなお悩みをお持ちの方も多いと思います。
産業事故を防止するための基本概念としての「安全文化」について解説していきます。
安全文化とは?
英国のJames Reasonは安全文化とは「恐れを忘れず安全性向上への努力を継続することであり、組織全体の価値を共有することにより努力の継続を達成する力、そのものである。」と定義しています。
「社会・組織と人」の健全な関係を構築し、これらがシステムの安全性に影響するリスクを最小化するための基本概念が、安全文化です。
安全文化を構成する要素
チェルノブイリ原子力発電所事故以降、国際原子力機関(IAEA)が安全文化の概念を提唱して以来、さまざまな研究や組織事故の分析によって安全文化を構成する要素が議論されてきました。
1.組織統率(ガバナンス)
組織内で安全優先の価値観を共有し、組織管理をおこなうことです。
コンプライアンス、安全施策における積極的なリーダーシップの発揮が求められます。
具体的行動「上司の本気度を示す」
- ポスターや文章だけでなく、トップや上司から従業員へ直接取り組み方針を徹底的に議論することです。
- 現場に安全リーダーを置き、安全の懸念や問題を吸い上げる役割を与え、要望や指摘に対して素早くフィードバックすることが重要です。
- 安全管理プログラムの実施範囲に協力会社や派遣社員を加えることです。
- 安全に関する相談窓口を設置しましょう。
2.責任関与(コミットメント)
組織の経営トップ層および管理者層から一般職員まで、また協力会社社員までが各々の立場で職務遂行に係る安全確保に責任を持ち、自律的に関与することです。
具体的行動「当事者意識をもつ」
- 管理者自ら安全性向上に向けた行動をとることが重要です。
- 無関心な態度はすぐに伝染し、従業員はみな非協力な態度を示すことになります。
- また事故率のような結果指標ではなく、安全性向上に向けた行動であることが重要です。なぜなら事故発生時に無力感を感じるためです。
- ボトムアップにより提案された全員参加の活動も重要です。
3.相互理解(コミュニーケーション)
組織内および組織間における上下、左右の意思疎通、情報共有、相互理解を促進し、これに基づきふりかえることです。
特にマイナスの情報についての共有をおこなうことです。
具体的行動「相互理解のしかけづくり」
過去よりも勤務後の飲み会などが減少し、また派遣社員など立場の違う人間が増加し、相互理解が難しくなっています。
会社内でのパーティ、家族をふくむ工場見学会、などのしかけを整備しましょう。
4.危険認識(アウェアネス)
個々人が各々の職務と責務における潜在的リスクを意識し、これを発見する努力を継続することにより、危険感知能力を高め、行動に反映することです。
具体的行動「知識と原理原則は感性の源泉となる」
- 現場の巡回やパトロールにより、危険箇所のピックアップや潜在リスクを常に見出し、報告・改善する習慣をもちましょう。
- 設備の運転に関する知識やダイナミクスを理解するため、警報やアラーム時の対処についての問答をおこないましょう。
- リスクアセスメント、緊急時訓練などをおこなうことも重要です。
5.学習伝承(ラーニング)
安全重視を実践する組織として必要な知識(失敗経験の知識化)、そして背景情報を理解して実践する能力を獲得することです。
これを伝承していくために、マネジメントにもとづく組織学習や教育訓練を実施することです。
具体的行動「体系的に教育システムを整備する」
- 体系的な教育を実施し、できるだけ全員に行き渡るように配慮することです。
- 全過程を修了したらセーフティエンジニアとして認定しましょう。
- 再雇用者を教育職として任命し、マンツーマンのOJT教育をおこないましょう。
6.作業管理(ワークマネジメント)
文書管理、技術管理、作業標準、安全管理、品質管理などの作業を適切に進めるための実効的な施策が整備され、個々人が尊重することです。
具体的行動「作業手順を整備を優先する」
- 作業手順使用を義務付ける
- 非定常作業であっても手順書を事前につくり、アセスメントを十分に行いましょう。
- 設備設計者、管理者、作業者、安全担当者の目線を入れて作業手順を作成しましょう。
7.資源管理(リソースマネジメント)
安全確保に関する人物、物的、資金的資源の管理と配分が一過性でなく適正なマネジメントに基づき行いましょう。
具体的行動「安全にコストを支払う」
- 過去トラブルに対する同種の安全対策を一本化し、実行可能な安全対策とする
- 安全へのコストを算定し、適正な人員体系とする
8.動機付け(モチベーション)
組織としてふさわしいインセンティブややる気を与えることで、安全性向上に向けた取り組みが促進されるとともに、職場満足度を高めることです。
具体的な行動「エキスパートを評価する」
- やはり現場のエキスパートがあまり評価され、尊敬されていないという問題があります。
- 長い現場経験をもつ人、また優れた技術や技能をもつ人を優遇することが、若手の仕事への熱意の復活、活性化に役立つものです。
まとめ
今回の記事はいかがでしたでしょうか。
安全文化を作り上げるためには、上司・管理者の本気度が最重要であり、その他の要素の実現にも大きくかかわってくると思います。
まずは上司や現場の管理者が率先して姿勢や方針を示すことからはじめましょう。
安全文化のベースとなるスイスチーズモデルついてもよく読まれています。どうぞ参考にしてください。
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