組織の安全文化を議論する上で重要な考え方の1つである、スイスチーズモデルについて解説します。

・スイスチーズモデルってよく聞くけど、具体的にはどんな定義なの?
・スイスチーズモデルをすり抜けるエラーをどうやって防いだらいいのだろうか?
その疑問に答えます。
わたしの職場でも過去は、安全の防護層を何重にもすり抜けて事故やトラブルに至ることがありました。
その背景には、職場が陥りやすい「無知」「同調」「無関心」などによって、防護層自体がいとも簡単に無力化されてしまうこともありました。
そんな経験から、スイスチーズモデルというこのシンプルなモデルは大切なものだと感じています。
組織文化の「穴(問題点)」を部下後輩と共有していく際に、ぜひ活用して頂ければと思います。
ぜひ最後までお付き合いください。
スイスチーズモデルとは?
スイスチーズモデルとは、事故は防護の階層に生じた穴が偶然に一列に並んでしまうことによって、システムが持つ潜在的な危険が顕在化してしまう、という考え方です。
何重にも安全に関わるシステムを構築していれば、事故にいたる可能性は限りなく低いと考えてしまうものです。
しかし実際には、各システム(防護層)にはスイスチーズのような穴があります。
スイスチーズモデルで「穴」となる要因は以下の通り。
スイスチーズモデルの穴を作る要因
- ヒューマンエラー(うっかり、ポカミス)
- 規則違反などのエラー
- 企業文化などの潜在的原因
あるシステムがメンテナンス中で機能していない、また人為的ミスなどによって防護層の1つがまったく機能しないこともありえます。
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スイスチーズモデルの穴を通さないための対策とは?
ではどうしたらスイスチーズモデルの穴をすり抜けないことができるのか?
その対処法として2つの考え方を紹介します。
フールプルーフを仕掛けておく
フールプルーフとは、間違った動作ができないような仕掛けをすることです。
フールプルーフの例
- 車:ブレーキペダルを踏まないとエンジンがかからない
- 洗濯機:フタを閉めないと回転しない
- ウォシュレット:座らないと水が出ない
- ケータイ:2つのボタンを長押ししないと電源がつかない
ヒヤリハット事例の集積
「事故のきっかけは人間だが、事故の原因は人間ではない」という考え方があります。
したがって大事故の前触れとなりうるヒヤリハット事例を職場のメンバーでよく議論し、多重の防護層を改善していくことが重要です。
事故の原因には、人を起点にして機械、周囲の人、手順、物性、作業環境などが関連しています。
対策は防護層として十分機能しているか?
防護層が意図せず機能しないタイミングがないか?
ということを主眼に対策していきましょう。
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非定常作業など防護層が弱い場面で判断するのはやはり「人」です。
そういった場面では、人の危険予知力が大切。
本質的な安全を追求するには莫大なコストがかかります。
なのでまずは段階を踏み、職場の危険予知力を高めることを最優先課題としていきましょう。
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安全レベルの高い組織はマインド面も高い水準
事故を起こさない組織には、「安全文化」という目に見えない能力を備えています。
安全文化が浸透した組織の力5つは以下のとおり。
- 失敗から学ぶ
- 単純化を許さない
- オペレーションを重視する
- 復旧能力を高める
- 専門知識を尊重する
不測の事態を防止することを目的として、失敗を教訓に姿勢を貫くことが大切です。
また万が一不測の事態が起こったとしても、元に戻す力、つまり弾力性のある組織を目指すことです。
日々職場のメンバーの行動に対して、一つひとつ振り返っていきましょう。
それが安全文化の醸成につながっていくはずです。